イグレン 加藤 文男
品質に関するもう一つの問題は不良率の基準です。
欧米系の企業は、購入する製品や部品の中にある程度の不良品は含まれていることはやむをえない、仕方のないことと考えていました。数多くの部品を使用し、何人もの作業者が組み立てする工程で100%すべて良品にすることは統計的に不可能であるという考えからきています。従って、ある程度の不良品が混在することはやむをえないことと考えているのです。その上不良部品が含まれていれば、「使用する時に見つけて取り除き使用しない」と言う考えです。だから想定される不良の数量を予め見越して余分に納入するという考えもあります。製品の組立製造が終わった時に部品に不足なく、計画通りの数量ができれば問題にはしないのです。海外調達の取引先には、このような考えのところもあるのです。
ところが日本の企業では良品100%の考え方が普通です。製品を購入し、その製品が不良品であれば、その人にとっては100%の不良率になるということです。製造工程では極僅かな不良率かもしれないが、そのわずかな不良もそのお客様に大変迷惑をかけるためにお客様には、不良品を渡してはいけないというのが基本です。不良品が市場に出てしまうと、後々クレームとなって大きい問題になり、ブランドイメージを損なうことになります。
少々コストは高くなっても、最初から100%良い部品を使用し、100%良品を製造した方が効率も良く苦情も発生せず販売店やお客様との信頼関係を培い、長い目で見てもメリットがあるという考えです。従って、不良率については厳しい要求をします。
日本の製造業は、少々価格が高くなるのを承知で100%の良品を出荷しようとする考え方が強いのです。戦後のある時期、日本製品は“安かろう、悪かろう。”と大変評判の悪い時期がありました。日本の製造業はその後品質管理を導入し、QCサークル活動を考えだして、作業方法を改良し、品質を改善してきました。不良率は年とともに大きく減少し、「安かろう、悪かろう。」から「Made in Japan」が欲しいというレベルまでに品質を向上させたのです。そして現在、日本製品の品質の良さについて疑う人はなく、世界で最高と評価されるまでになったのです。
海外調達では、最初に許容する不良率を明確に取り決める必要があります。原材料や部品の場合、組み立てに使用する部品の数や不良が発見されたときに交換に要する手間などもこうりょして個々に決めます。機器に組み込まれる部品や材料には、一度部品を組み立てると不良品を100%発見するのは困難になります。不良品を発見し、原因を調べて不良の部品を取り外し、良品と交換するとそれまで組み立てに要した時間がすべて無駄になります。これらの状況も勘案して、原材料に許容される不良率を決定します。ある不良率を超えたロットが納入された場合のペナルティを決めておくこともプレッシャーをかける一つの方法です。