8 海外調達で失敗を繰り返さないために その1

その1 国内との相違を理解し、失敗情報を共有する

イグレン 加藤 文男

 資材部や購買部門の目的は、「必要な品質の原材料や部品を、必要な時期に、必要量を必要な場所に最小の価格で、提供すること」にあります。国内調達でも、いろいろ改善すべき点は多いのですが海外調達では気を付けなければならないことがさらに多くなります。

前回まで国内調達と海外調達の違いをいくつか挙げてきました。海外調達では、慣習や文化、考え方の違いを知らずに商談を進めていろいろな問題に遭遇し、失敗を経験してきました。海外調達においては、世界の商慣習や社会状勢をよく理解して対応すれば、未然に防止できることが多いものです。海外調達では、まずこれらの違いを正しく把握し、どのように失敗に結びついたかを知ることです。

失敗は、担当者がその内容を一度知れば、その多くは繰り返さずに済むはずです。しかし、社内の先輩や前任者は、これらの失敗を恥ずかしいこととして公表することをためらいます。大抵の失敗はもっともらしい理由をつけて隠されてしまうことが多いのです。従って同じ会社の中でも同じ失敗が繰り返されていることがたくさんあると考えられます。失敗を繰り返さないために社内の先輩や前任者のその内容と原因を明確にし、公表することが大切です。

価格は、打ち合わせの段階で決定するので明確ですが納期遅延はその時までわかりません。品質は発注した原材料が日本に届き、受入検査でわかります。時には、製品に組み込んで初めてわかる場合もあります。品質問題は、通常の納期遅れ以上に完成品の販売開始へ大きな影響を与えるとともに、お客様からの信頼を失うことにつながります。海外調達では、価格、納期、品質ともに良い取引先、安心できる取引先を見つけ出し、交渉することが基本です。不適切な取引先の選定は、大きな失敗の一つです。

海外調達で失敗を繰り返さないためには、まず国内調達との相違点を「リスト」にして、情報を共有しておきましょう。また、海外調達の「失敗の記録集」を作成し、共有できるようにすることです。失敗の収集は、自分の失敗だけでなく、他人の失敗、他社で聞いた失敗として聞き出すとたくさん集まります。できるだけ多くの失敗事例を集めて、全社で共有し、失敗を防止したいものです。
そして、同じ失敗を繰り返すことなく、楽しく海外調達を進めていただきたいものです。

掲載日:2016/04/26

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