30 危機(リスク)への対応 1

危機(リスク)と危機管理

イグレン 加藤 文男

 世界各国の経済や産業は年を経るごとに大きく発展し、日本人の活動範囲も大きく拡大してきた。冷戦の終了以降、民族間の紛争、所得格差の拡大、環境汚染、森林破壊、インフラの老朽化など問題は更に大きくなる傾向がある。
 国内取引では、経験的にある程度の情報があり、知識として持っている。また、周辺からの危機に関する情報が事前に入手できることもあり対応も可能である。国内においては危機(リスク)に遭遇してもその損害も少なく、「勉強不足でした」と言い訳で済むかもしれない。
 海外調達、海外生産では国内における調達と異なり思いがけない危機に遭遇する。文化や習慣の違い、宗教観の違い、民族間の問題、伝染病など日本の慣習に慣れた担当者には短期間に理解し、対応することは海外調達や海外生産の担当者にとって大変難しいものがある。海外との取引(企業経営)において危機に遭遇した場合、対策が遅れ、その回復にも時間がかかり「想定外」ということで済ますことはできないほど損害も膨大になる。
 海外で活動する担当者はできる限りの情報を入手し、対応策を準備し、その被害を最小に抑えなければならない。
 
危機はできるだけ事前に手を打ち、防止する。もし、不幸にして危機(リスク)に遭遇した場合、速やかに危機を解決し、できるだけ損害を最小にする。そして、速やかに原状に回復することである。

1 危機(リスク)とは
 危機(リスク))は、その範囲が広く明確な定義は難しい。しかし、その対策を準備するうえで検討する範囲を決めておきたい。危機(リスク)とは、企業経営や事業経営において予定したとおりに行かない事態や想定外に大きな損害を被る恐れのできごとや事態のことと定義できるであろう。その対象は、防災、防犯、テロ対策、企業経営へのさまざまな危機すべてを含める。
 
最近では、企業が社内法規や社内の慣習など基本的なルールに従って活動する企業統治に加えて、法令順守、更に企業の社会的責任の履行、企業倫理(モラル)を守る企業コンプライアンスがある。
2 危機(リスク)管理とは
 
リスク管理とは、平常時にリスクに関する情報を収集し、リスクの予兆に気づき、リスクとして発生する前につぶす、また、リスクの発生を事前に可能な限り想定し、企業として対応可能な範囲の費用でリスクを回避し、リスクによって被る被害を低減する対応策を準備する。不幸にしてリスクが発生した時は速やかにそのリスクを解決し、原状に回復を図ることを意味する。
3 海外調達・海外生産で遭遇する危機
 海外調達や海外生産において遭遇する危機には次のようなことがあげられる。可能な限り事前に情報を入手し、遭遇する機会を減らし、不幸にして遭遇した場合、被害を出来るだけ小さくする。その上出来るだけ早く復興することを考えたい。
(1)自然災害による危機
(2)突発的事故
(3)政治・経済・社会的危機
(4)経営上予測可能な危機

 次回から、その対策を考える。

掲載日:2017/03/20

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