イグレン 加藤 文男
8 取引先管理(外注管理)
海外調達における取引先管理(外注管理)は、最初は取引金額も小さくその体制も人員も準備が大変である。しかし、納期も品質も国内取引と同じように管理が必要である。
国内の取引先管理で実施していることと同じことを文書で確認することで始めることを勧めたい。国内調達では取引を始める際に「取引基本契約書」や「品質保証協定書」を取り交わすことを実施する会社は多い。海外調達でもこの基本を忘れないようにしたい。海外取引こそこの基本を守りたい。海外の取引先との契約書など日本人にとって文書の交換は面倒なものである。しかし、国際取引をする企業間でこの種の契約は当然のように行われ抵抗は少ない。この種の契約書には定型文が作られている。最初の交渉の段階から定型文を用意し、提示し契約書を交換することから始めたい。
海外調達の取引先管理(外注管理)は、契約書の交換から始めて納入実績を把握しデータを積み重ねていくことが重要である。
(1)原材料の調達先の把握
部品の場合も製品の製造の場合でも使用される原材料が変更になれば品質にばらつきが発生するのは当然である。部品の製造に使用する原材料の購入先が変更になれば、出来上がる部品の品質も変わると考えるのが普通である。
国内取引でも品質保証や品質管理では購入先の変更があれば届け出ることを要求する。原材料の購入先に変更があればその原料が指定するものと同じであるデータを要求する。原料が加工工程を経て部品になってからでは判断できないことが多い。放置したためにその部品を使用した製品が市場で使われ、しばらくしてから品質問題が発覚することもある。
取引先に原料の調達先を安易に変更しないことを約束させる。変更した場合には事前に報告をさせることを文書にしておきたい。
(2)製造工程の変更も製造条件の変更
組立製造の場合、原材料(部品)に変更がなく、これらを組み立てる作業者に変更がなければ品質は大きく変動しない。作業者が変更になっても同じ品質を確保するために作業指示書を作成し、指導徹底する。
樹脂成型品では、成型機械の金型温度が同じ品質を確保するために重要な要素になる。そのために「トライ」と言って時間をかけて最適条件をテストで見つけ出し、その後の成型は同じ条件で行う。樹脂成型品で不良が増えて歩留まりが悪くなるのは、成型条件の設定の事前検討の条件から外れている場合が多い。板金加工部品でも使用する金型の取り扱いや加工時の清掃を怠るとキズが発生し不良率が高くなる。
品質を維持するには製造工程の製造条件を変えないことがポイントになる。
(3)品質異常に対する対策報告書管理
品質トラブルが発生しそれを解決した際、その具体的な対策について毎回報告を要求する。品質問題の発生時にいい加減な対策で済ませると必ず再発する。報告書により再発防止対策が適切であるかどうかを判断する。