イグレン 加藤 文男
7 適切な製造設備と試験設備
適切な製造設備や試験設備は、調達する原材料の品質の確保に欠くことのできないものである。まず、資材購買の初心者は、社内で自社製品のためにどのような製造設備、計測機器、試験設備を使用しているか確認しておきたい。自社に必要な製造設備や試験設備がわからなくては適切な原材料(部品)の調達はできないからだ。
前にも記載したが最近新しいメンバーに対する指導・教育がなされずに現場に配置されることが多い。即戦力といって基本的なことを教えずに仕事をさせることに専念する。初心者にとって設備や機械には理解が難しいことがあるかもしれない。しかし、少しずつ学んでいきたい。
(1)製造設備
原材料でも製品でも製造するには、適切な製造設備が必要である。取引を始める前に製造設備のリストを要求するのは当然である。企業の事業概要書やパンフレットにはたいてい掲載されている。製造設備により、その企業の製造能力をおおよそ判断できる。
樹脂成型工場は、成型する設備の大きさで成型できる部材の大きさが決まる。注文しようとする部材の大きさで発注するに適切な企業かどうか判断できる。また、ごく小さな部材はその精密さで勝負する企業もある。
自社が要求する成型部材の大きさと精密さは所有する設備で判断する。部品によってはクリーンルームが必要となり一定レベル以上のクリーン度が要求される。製品の製造委託ではシールドルームが必要になるものもある。製造設備は、調達する原材料でその技術レベルに相当な開きがある。設計技術者から必要なレベルの情報を得ておきたい。
商社を経由して調達する場合には実際に製造する現場に出向き見学し、確認が必要である。
(2) 計測機器
部材の出来栄えを測定する測定機によってもその工場の能力を判断できる。設計部門に適切な計測器の設備がなければ要求するレベルの部品や製品の設計はできない。簡単な例でいえば、ラジオやテレビジョンなど特定の周波数を扱う機器を製造する工場では、その周波数に対応できる信号発生器などが必要である。オシロスコープやシンクロスコープも機器のトラブル解決のための必需品である。機器の製造を委託する場合、設計部門だけでなく、検査部門、品質管理部門などに備えておく必要もある。
中国のある樹脂成型工場を訪問した際、「うちにはこのような高価な設備を備えています」と社長に自慢されたことがある。それは今では当たり前に使われている三次元測定器であった。暑い気候条件の国であったが25℃に管理された部屋に置かれていたが使われている様子はない。「たいへん高価なので誰にも触らせていません」とのこと。設備があっても実際に使われていなくては意味がない。多分日本のセールスマンが「御社ではこのくらいの測定設備がないと日本企業は相手にしません」と売り込んだものだろう。いくら良い設備があってもこのような会社には任すことはできない。
(3) 試験設備
電気部品や電子部品によっていろいろな信頼性が要求される。設計技術者が仕様書に記載するが一定の寿命を要求することもあり、耐高温度や高湿度の場合もある。使用する製品により雷対策も要求する。日本企業では常識とされる試験項目も海外ではこの厳しい要求など全く無視している会社もある。注意が必要である。
完成品に使用される原材料においても低温度・高温度、高湿度、耐振動試験、落下試験で確認する項目もある。調達する原材料に都のような耐久試験が要求されるかを明確にしておきたい。
試験設備に関する知識はまず自社内にある試験設備とその目的や効果など確認して習得することから始めたい。