イグレン 加藤 文男
1980年代、欧米を主要な市場として輸出を拡大していったが、輸入国の製造業に損害を与える恐れがあるとして、貿易摩擦として捉えられ始めた。貿易摩擦は、日本製品に対する輸入制限、輸入禁止、アンチダンピング課税という形に発展した。
まず、相手国の経済的情勢、政治的な情勢により、輸入制限の形となる。日本側から自主的に数量などを限定する輸出制限(相手国にとって輸入制限)の形をとることもあった。更に厳しくなると輸入禁止の措置が取られる。アンチダンピング課税とは、不当に安い価格(不当廉売)で輸出をし、輸入国の産業に損害を与える恐れのある場合、不公正輸出として、輸入国政府が国内産業を保護するために関税を課すことである。現在は、海外生産が進み、自動車や電機既製品では訴えられることは少なくなったが化学製品や鉄鋼では、時々話題になっている。
不当廉売の疑いがかかり、「調査に入る」と調査の対象となった企業は、不当廉売でないことを膨大な資料を準備作成し、当方から証明する責任がある。これが証明できないとアンチダンピングとして高額の税金が課せられる。当時100%とか150%の高額な税金が課せられたという情報もあった。
アンチダンピンング課税は、1960年代後半から米国におけるテレビセットやテレビチュナーで調査が始まり、1970年代にはオートバイや、自動車へと波及した。1980年代には、米国だけでなく欧州でも毎年のように調査の対象となる製品が続出した。
日本製品に対してアンチダンピングの恐れがあるとして調査を開始した事例に次のようなものがあった。
発生年 地域と製品名
1968 USA:テレビセット、TVチュナー
1975 USA:自動車
1977 USA:オートバイ
1980 USA:電子レンジ、タイプライター
1982 USA:ポケットベル(ページャー) 欧州:VTR
1983 USA:ポリエステル繊維
1984 USA:電話機、自動車電話 欧州:電子タイプライター
1985 USA:64kDRAM、256kDRAM、EPROM 欧州:コピーマシン
1986 欧州:カラーブラウン管、電子レンジ
1987 USA:フォークリフト 欧州:EPROM、DRAM、自動車電話
1988 USA:3.5インチフロッピーデスク
1989 USA:ビジネステレフォン、製図機
1990 USA:薄型ディスプレイパネル、ワープロ
1992 USA:電動のこぎり
1993 欧州:放送用TVカメラ
1996 USA:スーパーコンピューター
1997 欧州:ファクシミリマシン
注:自動車電話とは、現在携帯電話のように小型化する前の商品
このように電気機器、電子機器関連のアンチダンピングの調査として扱われた製品が多かった。輸入制限、輸入禁止、ダンピング課税は、海外調達、海外生産への動きの大きな要因であった。