イグレン 加藤 文男
資材購買はいつも少しでも安く購入しようと調達先と交渉しようと考えています。逆に営業担当者は、少しでも利幅を大きく、そして少しでもたくさん販売しようと考えています。資材購買担当者は、この営業担当者に負けない対応力が要求されます。
営業に負けない購買担当になるには、まず、購入する「モノ」に関して、こちらはできるだけ多くの情報を持っていなければなりません。営業担当者に負けない情報が必要なのです。そのためには、毎日の新聞から得られる情報は、最低限度のものになり、またそれだけでは十分ではないことは言うまでもありません。
交渉のために使用されるいろいろな条件には次のようなものがあります。
(1)製品に関する妥当なコスト
まず、「その製品や部品の妥当な価格はいくらか」ということを正しく把握しておくことです。その原材料は会社としていくらで購入すべきかの適正な購入価格を社内で計算し、情報として持っておくことです。その情報が当面の購入交渉の最大値(最高価格)になります。
(2)技術の進歩や新製品発売
技術の進歩や市場の需給のバランスの変化により、市場の価格も変化します。1ヶ月前には、安いと思って購入した価格が現在はとんでもなく高かったということにもなります。技術の進歩で従来製品の価値が下がることがあります。このことはパソコンや液晶テレビなどで皆さんも経験していると思います。製品や原材料を製造する企業も他社に負けないように研究し、コストダウンに努力していることがその原因の一つですが季節的な要因など他にも理由があるのです。
妥当な販売価格と言えませんがコストとは別にパソコンや液晶テレビ、家電製品は競争相手が新製品を発売することや決算期をむかえて在庫処分のタイミングがあれば、販売価格を変更します。新製品の販売が予定されている場合には、古いモデルは在庫が残らないように販売を完了しなければなりません。その為に古いモデルを当初予定した価格より安く処分します。(型落ち製品の処分価格)パソコンなど型は古いけれども性能に問題のない製品や同じ価格で更に高性能のモデルを購入できるチャンスでもあります。
また、エアコンや暖房器具は、季節により売れる時期と売れない時期があります。季節商品は、季節はずれになる前に在庫を処分します。新製品の発売の前に、在庫を処分するために価格は大きく変動します。
資材購買担当者として、このような価格の変動の要因を把握し、調達する原材料についても研究しなければなりません。
(3)使用する原材料の価格変動
鉄鋼製品の値上がり、銅の値上がり、世界的な原油の値下がりや値上がりなど最近の新聞には原材料の価格変動に関する情報がたくさんあります。
また、鉄鋼製品、セメント、造船などの原材料が現在中国では過剰在庫となっているとの報道があります。過剰在庫は、利益を確保せずに処分されることがあります。ダンピングは不法などといわれますが理由は別にして市場価格は下がります。資材購買担当者として、自社の製品販売価格が厳しい場合、少しでも安く原材料を調達しないとその製品の利益は確保できません。市場における過剰在庫の情報を見ながら少しでも安く調達することに努力しなければなりません。ただし、過剰在庫や特別安い価格の原材料は、品質に不安が存在する可能性があることにも注意しなければなりません。
(4)社会的な条件の変化
更に影響の大きいのは、各国の景気の動向です。例えば、中国の発展状態(GDPの前年比)などです。先に述べた原材料の価格は各国の経済状況に影響されますが、中国の景気は停滞していてもインドの経済はたいへん好調といわれます。中国景気の停滞はありますが、それでも東南アジアの小さな国一つのGDPに相当する以上の伸びはあるとので支障がないと判断する人もいます。米国も順調な経済成長をしています。情報の出所を確認し、情報を正しく評価し、対応できるようにしたいものです。
(5)各種の事故や自然災害
原材料の生産地域における自然災害や生産工場の葛西や爆発事故は、原材料の価格の上昇の原因となり、供給量に大きな影響を与えます。これらの情報は、マスコミで直ちに入手できるので情報の入手と共に早めに対応することが可能です。自然災害は、その地域にとって毎年発生するごく当たり前の現象で日本の関係者に情報が知らされないこともあります。
このように営業に上手に対応するためには適正な情報の入手し、調達する原材料や製品の価格の変動を予測し、対応するために周到な準備が必要なのです。