イグレン 加藤 文男
2013年になって為替レートが円高から大きく変動してきました。1ドル¥80で推移していた為替レートが円安の方向に変わり始めたのです。2013年半ばには、1ドル¥100に近づき、2014年後半には、1ドル¥120まで円安になりました。2012年2月23日の為替レートは、¥80/$でしたが、現在2016年3月4日のドルの為替レートは、1ドル約¥113ですからこの間に1ドルにつき¥33円安が進んだのです。このレートは、刻々変動しています。
この為替の変動は、原材料を海外から輸入している資材購買担当者にとってどのような影響があるのでしょうか。
結論を先に言えば、円高は日本人が買い手の場合(輸入の場合)に有利、円安は、日本人が売り手の場合(輸出の場合)に有利になります。従ってこのところの円安は、海外から原材料を調達する資材購買担当者にとって輸入原材料の価格は上昇し、不利になります。
かつて円高で国内からの調達をやめて海外調達へ移行していた原材料部品の調達価格は高騰しています。為替の変動の推移を見て国内調達に変更する必要も出てきます。
ここで為替の影響を具体的に試算してみます。
2012年2月末の為替レート、¥80/$を基準とし、試算します。3月9日現在¥112/$から¥113/$で推移していますが計算を簡単にするために部品の契約価格は1個1ドル、輸出手数料など無視して為替レートを¥110/$として計算します。
2012年2月当時は、為替レートが¥80/$でしたので輸入した原材料を当時は1個80円で輸入できました。最近為替レートが円安になり、¥110/$になったので全く同じものを1個110円で輸入することになってしまうのです。1個について¥30も高く支払う必要が出てきたのです。約37.5%の価格上昇になり、たいへんな高騰です。これが円安の影響です。30%以上も輸入価格が高騰すると国内で調達したほうが安く購入できそうです。
海外からの取引はたいてい直接輸入を担当するのではなく専門の輸入業者や商社を経由して購入します。輸入業務を業者や商社に委託する場合、このような為替の変動があると輸入業者や商社から購入価格の変更が要求されます。業者が輸入する原材料を購入する場合は、その変動に合わせて購入価格が変動するのが普通です。
為替レートは、突然大きく変動するのではなく、毎日のように少しずつ変動します。うっかりすると毎日の小さな変動の積み重ねが大きな価格の変動になってしまうことがあるのです。勿論、新聞やテレビなどで円安の変動が継続すれば必ず話題になります。資材購買の担当者も毎日の新聞報道に十分注意をし、購入価格がどのように変動するか見ておくことが必要です。為替の変動により、海外から購入していた原材料を発注のタイミングを見て国内調達に変更することも検討しなければなりません。ただし、輸入の契約価格をドル建てで決めている場合であり、始めから円建てで輸入している場合は関係ありません。
最近原油の価格変動も話題になっています。2012年2月の原油価格(WTI)は、1バレル110ドルくらいでした。2014年後半からこの原油価格がたいへん安くなってきました。ここ数日少し値上がりしてきましたが3月9日現在1バレル38ドルになっています。2012年の価格に比較し、約3分の1になっている計算です。原油の価格の変動と為替の変動は、調達する原材料の価格に大きな影響を与えます。特に、原油を直接原料にする原材料部品や製造する際にエネルギー消費の大きな原材料は影響が大きくなります。
毎日の原油価格や為替が直接翌日すぐに原材料の価格に影響することはありませんが、この傾向が継続するといずれこの影響が出てきます。資材購買担当の方は、為替の変動と共に原油の価格変動にも注意をしておかなければなりません。