イグレン 加藤 文男
資材購買担当初心者にとって新しく覚えることがたくさんあります。基礎的な知識、基本的な知識といっても何から手をつけてよいか判断に困ることでしょう。ここでは電気機器、電子機器を製造する企業や工場を想定し、資材購買担当に配属されたことを想定して要求される知識を考えて見ます。
要求される知識やスキルには、その会社の事業や製品に固有のものとして製品に使用する原材料、部品に関する知識や製品を設計するときに必要な知識、製品を製造する際に必要な機械や設備に関する知識があります。技術に関する知識や製造設備に関する知識は、専門家に任せることが基本ですがそこで交わされる会話の概要が理解できる程度の知識が資材購買担当者も持つ必要があります。
ここに大きな項目を挙げておきますので各人、事業分野、製品分野に応じてそれぞれに学ぶべき項目を追加しましょう。
1 原材料部品に関する知識
電気機器、電子機器を製造するために使用する原材料に関する知識です。仕様書を正しく理解し、製造者、取引先に伝えるために必要な知識です。設計者が製品を設計し、選択した原材料の名称、性質や構造についてその理由を技術的な知識として理解することです。設計者が特別意図するところがあれば、それらを聞きとり、汲み取って調達相手先に伝えられることが必要だからです。特に調達する部品や材料が多い場合、調達する部品材料の中の重要部品(キーパーツ)については、技術者と十分話し合って情報を入手しておきます。その為には製造現場又は、設計部門で自社が製造している製品をよく観察することです。製造現場を見れば、製作する手順も見ることができます。
(1)電気・電子部品
電気機器、電子機器には数多くの電気部品や電子部品が使用されています。これらの部品は、設計者が品名、型式、品番を指定するか、設計者が意図する性能を仕様書に記載しています。担当者は、それぞれの部品に関する基本的な情報を理解する知識が必要です。
特に半導体については、設計者が期待している特性を正しく伝えることができないと設計した機能や性能を発揮できない場合もあります。その重要なポイントを理解し、できるだけ漏れのないように取引先に伝えたいものです。各部品の製造工程の概要も知っておくと、問題解決の際にたいへん役に立ちます。できるだけ機会を捉えて、原材料、部品の製造工程を見学しておくと良いでしょう。
(2)プリント基板
IC/LSI化、部品の小型化、生産技術の進歩に伴って、電気機器、電子機器には必ずプリント基板が使用されています。簡単な機器では、片面基板が使用されていましたが、電子回路、電気回路が複雑になるに従って両面基板、から多層基板が使用されるようになりました。使用される機器の性能により、材質も変わってきます。一般的に多層構造になるに従って、製品の構造や技術的なレベルが高くなります。プリント基板の最新の技術動向、その構造や基本的な製造工程に関する知識として持っておきたいものです。
(3)機構部品
電子部品、電機部品、プリント基板などを取り付けるための金属製の構造物やそれをカバーする樹脂を意味します。使用される目的により、部品、材料の機能や構造に合わせて設計されます。使用される部位に応じて性能や強度も要求されます。また、製品の外観ケースなどに使用される場合は、でき栄えなどに影響しますので仕上がりの美しさも要求されます。
板金プレス部品の製造に必要な金型や樹脂成型品に使用される金型とそれを使用した製造工程はぜひ現場で確認しましょう。
樹脂成型品に発生するウエルドライン、フローマーク、ヒケ、バリなど特有な不良現象の内容と発生原因と対策なども理解しましょう。短期間に知識の習得は難しいのでできるだけ製造現場に足を運び、製造条件や工程を見学するなどして経験を積み重ねたいものです。
2 製造設備・機械に関する知識と情報
製品を製造する際に使用される組立て製造設備や完成した製品の特性を測定する機器や検査設備に関する知識です。製造設備が製品の品質や製造効率に影響し、製造コストに反映されます。コストダウンのために改善には、製造設備や機械に関する知識もたいへん役に立ちます。
また、改善や品質問題の解決には、色々な分析装置も必要です。この分野では技術的な進歩は著しいものがあり、従来不可能であった分析も比較的安価に分析する装置も開発されています。
多忙な中にあっても、展示会にできるだけ足を運び、常に最先端の技術情報を入手し、そのトレンドを見ておきます。自社の新規開発商品に使用できるように情報入手に心がけ、関連部署に情報提供したいものです。製品を製造するための設備や機械の一部として次のようなものがあります。
・ 自働装着機(リフロー半田付け設備を含む)
・ 自働検査装置(X線検査装置、照合判別技術)
・ 分析・解析装置(X線検査装置)
品質問題を解決し、品質向上、効率向上に関するソフトウエアも開発されてきています。この種の展示も、原材料や部品の展示会で増えてきています。関心を持って展示ブースを見る機会を持ちたいものです。