47 初心者も知っておきたい金型の知識 5

危機に対する準備と対応

イグレン 加藤 文男

 最近気候変動などによる自然災害、火災や爆発などにより、調達すべき原材料が納期通りに入手できない問題が発生しています。金型は、製造の際のコストが大きいためにトラブルに遭遇するとその損害も大きくなります。洪水、土砂崩れなどの自然災害、火災や爆発、更に企業の倒産など金型に関する不測の事態への対応は日常から考えておきたいものです。

1 日常管理
(1)金型への適正表示
わかりやすい大きな表示を心がけましょう。可能な限り、銘板を取りつけます。自社の金型について表示する位置を一定位置に決めておきます。
金型は、他の部品材料に比較し、重量が大きく簡単に運搬できませんが盗難がないとはいえません。
(2)最終図面の管理
前回記載したように金型は、色々な工程を経て完成します。設計者、金型製作者、成型業者と多くの人が介在します。製品の試作を完了し、変更部分を修正して最終図面を確定します。修正した最終図面とトライの際に取得した条件に関するデータは、大切の保存したいものです。
大きな災害に遭遇した場合など再度製作することにもなりかねません。その際、できるだけ速く対応できるように整理し、保管します。
また、仕様変更が発生した場合には、変更経過を詳細に記録しておきます。
(3)資産保全
金型は金額の大きな資産です。重要な金型は、災害に対する保険契約を検討します。
(4)定期的な管理の確認
金型はすべて管理台帳の作成し、管理状態も確認しておきます。使用頻度の少ない金型も定期的な在庫確認(棚卸し)が必要です。
長期間使用しない不要な金型は廃棄処理を徹底します。所有者は、存在の確認でよいのですが、預かる方はその在庫スペースも大きくなり、ムダとなります。

2 貸与先の管理
(1)保管場所確認
預けた貸与先が大切な資産である金型を安全に保管していることを確認します。強度が十分な金属棚に保管され、自社の金型がわかりやすいように保管されていることを確認します。
(2)保管状態
金型は、当方の必要な時に直ちに使用できることが条件です。特に使用頻度の高い金型は使用後常にメンテナンスされていることを確認します。
また、他の金型の運搬や器材の運搬の際にぶつけられて傷などできないように管理されていることです。
(3)貸与先の安全性管理
貸与先とは継続して取引をしたいものです。与信管理とも言いますが安心して取引をするために常に経営状況などの情報を確認することです。倒産されては、製造を依頼できなくなります。安心して取引先を選ぶ必要があります。

3 非常時対策
(1)天災事変対策
自然災害など予測される場合には、貸与先の状況を常に把握します。日常の情報交換は、資産の管理だけでなく、相手先との信頼関係構築にもたいへん重要です。
災害が発生した場合には、できるだけ早く現場に駆けつけ、状況を把握する努力をします。
貸与先と協力し、資産の安全な場所への移動など検討します。
(2)貸与先の倒産
金型の預け先の倒産は、放置すると倒産企業のすべての資産が管財人など第三者の管理下になります。所有権は当方にあっても工場内に立ち入り不可能になり、回収に時間を要します。早くその会社から金型を入手しないと生産できなくなります。預け先の経営状況を常に把握し、悪い情報を入手した場合は、できるだけ速い回収が必要です。

掲載日:2016/02/07