41 新規取引先の開拓 1

情報の収集と選定の手順

イグレン 加藤 文男

 新しく購入する原材料、部品は、新しい取引先を探すことになります。新しい取引先は、将来も安定して継続して取引できる、安心な取引先を開拓し、選定することを心がけます。この仕事は会社によって開発購買として位置づけています。経験と高度な判断を要求されます。配属されたばかりの新人に新しい取引先を探す業務を命ずることは少ないと思いますが中小企業では、このような業務も指示されることがあるかもしれません。
取引先に関する情報の収集と選択の手順を整理しておきます。

1 新規取引先の情報収集
(1)仕様書の提示と見積書の取得
新規購入する原材料部品に関する仕様書などの情報を提供し、安定して供給できる相手先を探します。新しい取引先は、時間許す限り多くの取引先から見積書を入手します。この段階では取引することが決定していないので当方が提供する情報も限定的です。当方の新製品の情報も提供することが必要になるので機密保持に関する契約をすることもあります。

 (2)取引先に関する情報の収集
見積書が届くまでの間に取引先個々の情報を確認します。最近は各企業のホームページから入手することもできます。購入しようとする原材料や部品の技術力や製造能力は、会社の概要書やパンフレットに記載の製造設備のリストを入手すればある程度わかります。
末永く取引するために資金力や経営能力も確認します。これらの情報は、金融機関の情報や業界誌、専門誌などの情報も参考になります。

(3)取引先の選定
収集した取引先の情報から比較表を作成します。取引の決定に際して、企業概要書、決算書などの経営資料、取引金額に応じて、経営方針や経営者の考え方も確認しておくと良いでしょう。決定に当って、経営者と面談し、経営方針や取引に関する基本的な考え方も記録する欄を作ります。できるだけ生産現場を見学し、整理整頓など5Sの実践状況を確認します。この際、できるだけ品質管理や品質保証の担当者を同行すると良いでしょう。設備のメンテナンスの状況や原材料および製品の取り扱いなど従業員の仕事ぶりも確認しましょう。機密保持の可能性や物流など地理的条件も重要な要素です。

2 新しい取引先開拓の手順
新しい取引先が決定すると次のような基本的なフローで購入が進められます。
(1)見積書の取得
調達する原材料の見積を入手します。相手先が最初に約束した日程どおりに提出してきたかは大切な要素です。営業担当者の姿勢やその後の納期管理に苦労することにもなるかもしれません。

 (2)見積書の検討
見積書ではその価格が大切ですがそのほかの見積書に記載された購入の条件も確認します。見積書に記載された内容だけでなく、取引先の担当者から見積もりに至る経過などもそれとなく聞いておきましょう。そして、見積比較表を作成します。

 (3)価格折衝
目標価格との比較は重要です。満足した見積価格を入手できるとは限りませんがそのときは、将来の価格引き下げの可能性、工程改善、設計変更改善の可能性の確認も大切です。

 (4)取引先の決定
入手した見積書と取引相手先の状況から総合的に判断し、取引先を決定します。取引金額などにより、資材購買の決定する権限の範囲が決められています。品質管理や品質保証部門、技術担当者、経理担当者、さらに工場部門の担当者の意見をいれて総合的に判断します。検討項目目は、それぞれの会社によりすでに作成されていると思います。(次回、その項目について掲載します)価格折衝の経過は、調達履歴として貴重な情報になります。履歴としてできるだけ詳細に記載し、保存したいものです。後日、必ず役に立ちます。

 (5)取引価格の決定
新規取引先として決定すれば、購入価格を決定します。不採用となった購入先と価格も重要な情報です。必ずその経過を記録に残します。決定すれば、社内の購入手順に従って注文書を発行します。
決定価格は、仕入先だけでなく自社の経理担当者へ報告・連絡することもルールとして決めておきます。購入時期と支払時期、支払い方法などを明確にし、後日問題の発生がないように気をつけます。支払概算額の把握は、担当する経理部門にとって重要な情報です。連絡を怠らないようにします。

 この後の手続きと納期管理は、従来の取引原材料と同様です。
(6)注文書の発行
・ 品名、価格、数量、納期、梱包方法(荷姿)
・ 仕入先と正式注文書のフォーマット確認
・ リードタイムの把握

 (7)納期管理
・ 事務処理リードタイム
・ 調達リードタイム
・ 繰り返し注文の際の納期管理方法
・ まとめ生産とコストダウンの可能性
・ 進捗状況の把握
・ 納期遅延などの情報の把握と連絡

掲載日:2016/01/14