38 取引先の把握と管理

初心者は、原材料の構成とその調達先を知る

イグレン 加藤 文男

 電気機器や電子機器製品にはたくさんの原材料、部品が使用されています。自動車に使用される原材料、部品の数は更に多くなります。これらを製造する工場の資材購買担当者は、すべての原材料を間違いなく調達するのがその役割です。電話をする相手の人も会社に訪ねてくるお客様もすべて年上で経験豊富な人たちに見えます。こちらは知識も経験も少ない新人は、おろおろすることも多いかもしれません。資材購買に配属された新入社員は、調達している原材料の種類の多さと取引先の広範なことに戸惑うことが多いと思います。

 最初のうちは、社長や担当者を紹介されても、企業名も業種も社長名も一致せず、どの会社がよいのか、会社のどこに問題があるのかなど戸惑うばかりです。面談した相手については、その内容と面談者との会話内容、印象など必ずメモを取りましょう。その場でのメモができない場合は、後刻できるだけ速いうちに印象や気のついたことを記録します。社長や担当者の印象や人柄もメモしましょう。初心者は、経験豊かな先輩社員に尊敬の念を持って、担当する原材料とその取引先名や担当者を知ることから始めましょう。

 電気機器や電子機器製品は、その機能や性能を発揮するために電子回路や電気回路で構成されています。電気回路は、電源トランスやスイッチ、リレー、ランプやLEDなどの電気部品で構成されます。電子回路の多くは、プリント基板にICやLSIなどの半導体電子部品が取り付けられます。プリント基板は、最近相当複雑な回路で構成されるものが多くなり、プリント基板の片側だけに部品を取りつけた片面プリント基板から両面に部品を取り付けた両面基板、更に複雑な回路を小型軽量にするためにプリント基板を2枚、3枚と重ねてそれぞれの各基板の回路を効率よく接続する多層基板へと変わってきています。多層基板を上手に接続するためにコンピュータを使用して回路を作り出すこともします。トランスなど大きな電気部品は、フレーム(シャシーなど)に直接取り付けられます。

 これらの電気部品やプリント基板、ユニットは、ビスやナット、ワッシャーなどを使用してフレーム(シャシー)に取り付けられ、その間は、電線・線材で接続されます。さらに金属製(鉄板やアルミニューム)、木製、又は樹脂などのケースに収納され、製品の外観を美しくするために樹脂製の装飾パネルなども使われ完成します。金属製のケースは、金属材料を切断したり、折り曲げたり加工して製造されます。この加工は、板金プレス製造業でおこなわれます。材料が樹脂の場合は、樹脂材料を成型して製造します。樹脂材料を指定どおりに製造するために金型を使用します。金型は専門に製造する製造業者に依頼します。

 どの工場においても、調達する原材料はその機能や調達先などによって電子部品、電気部品、機構部品などと合理的に分類しています。その分類方法や構成が分かれば、どの原材料の調達を担当するかの理解を早めることができます。たいていの会社には担当する取引先のリストがあり、取引先に関する情報が整理されています。まずその分類するシステムを理解することから始めましょう。もし取引先のリストがなければ、そのリストを作ることから始めます。会社の規模によって、原材料や部品の種類や調達する量もが変わります。企業の規模が小さい場合には、すべての原材料や部品を一人で担当する場合もあるかもしれません。まず、自分で担当する原材料とその調達先を知ることから始めましょう。

 このように自分の工場で製造される製品の構造や原材料を理解できたら、次はそれぞれについて専門的な技術知識や製造のための知識を習得します。新入社員がこれらの専門的な知識は少しずつ覚えていきます。資材購買担当になりたてのときは、つまらないことでも質問できます。つまらないことを質問しても許されます。率直に疑問点を質問し、疑問点はできるだけ明確にしておきましょう。取引先は、相手の了解の得られる限り、できるだけ時間をとってその企業を訪問し、できるだけ製造現場を見せてもらうことです。資材購買担当者に配属されたばかりや異動した直後は、取引相手先も都合をつけてくれるものです。できるだけ時間をとり、訪問させてもらいましょう。記録の内容は、感じたことをそのままできるだけ詳細に書きとめておきます。面談や訪問の記録は、企業別にルーズリーフノートを使用するなど工夫をしたいものです。

 取引先については、会社概要や会社案内をできるだけ入手します。その会社の加工機械設備、成型機械設備の名称やそのメーカー名も記録しましょう。最初の訪問記録も単に「思ったよりきれいだった」とか「会議室のテーブルが汚れていた」などという記録でよいのです。いくつか訪問を重ねるうちに、「5SのレベルがD社より低い」とか「社長の言うことと社員の行動が違う」「掲示板のデータが古かった」「技術レベルは、B社より低そうだ」などその企業の問題点がわかるようになります。とにかく訪問の記録を継続することです。訪問企業ごとにファイルにします。

掲載日:2015/12/20