37 製造業に必要な開発購買機能 6

新製品開発各ステップの開発購買の役割

イグレン 加藤 文男

 新製品開発段階における開発購買の機能と役割を整理すると次のようになります。開発購買は、新製品開発では早い段階からの参画が重要です。
企業の組織形態により、担当する業務内容が異なりますのでそれぞれの段階で適宜判断しましょう。

(1)商品企画(新製品企画)段階の開発購買機
営業部門より新しく販売したい商品の要望が出ます。企業にとって取り組むべき商品化、開発設計技術部門と協議の上、技術的可能性、販売開始時期等を検討します。企業として販売すべき商品として決定されると技術開発と設計が始まります。企業の組織構成により異なりますが多くの企業では製品(商品)企画部門が中心となり、新製品企画書を作成します。
営業部門は、販売価格とその価格での販売可能数量(企画台数ともいう)を予測します。
最先端技術に詳しい開発技術部門は、技術に関する情報収集も得意です。新製品に必要とする新技術や新規部品の採用を提案します。技術に関しては開発技術が腕の見せ所でもあります。
製造部門は、現存する工法や設備で製造可能かどうかの判断し、最適な製造方法を選択します。新しい工法などの情報を入手し、採用し、実践するには新製品の導入時期が最も良いタイミングです。設備投資の決定もこの時期が適切です。
資材購買部門は、日常、最先端の技術を持つ原材料の供給先とコンタクトを持ち、情報を収集できる立場にあります。新技術、新工法のトレンドを開発設計部門や営業部門に提供してきた情報が活用されます。
これらの各部門の検討事項を持ち寄り、新製品企画会議を開催し、新製品企画書案について討議し、採用する新しい技術、製造方法、投資金額などを決定し、承認します。
開発購買部門は、新製品企画書が完成してから会議に参画するのではなく、最初の段階から新製品企画会議に出席し、新製品の機能、目標価格、開発日程の企画立案に参画します。
営業部門や技術開発部門と常にコミュニケーションを取り、これらの部門の要求を観察し、市場における新製品情報、新工法、これらの原材料に対応できる取引先についての情報収集を平行して進めることが重要です。

(2)新製品構想設計段階の開発購買機能
新製品構想段階に入れば、新規に開発する製品の概要が具体的になり、開発設計部門は、製品概要書を作成し、採用する構成部品の概要が提示します。構成部品の概要から、新規に採用する原材料が提示され、その仕様が明確になります。
開発購買部門は、採用する原材料のリストから、新規採用原材料を区別し、それぞれの原材料部品について調達すべき製造可能な取引先を探します。
この段階では開発購買部門は取引可能性のある取引先へ新しく採用する原材料部品に関する情報を提供します。将来の見通しなど取引先への適切な情報提供を行ないます。高度で未開発の新技術であれば、共同開発も検討します。
新製品に関しては同業他社製品の情報から、仕様の比較、価格の比較を行ないます。この段階で明確になった原材料の構成から、原材料費としての金額を想定し、既存の原材料と新原材料の割り振りを行い、見積原価作成の準備を始めます。

(3)設計段階の開発購買機能
採用する原材料や部品の構成を検討し、モジュールやユニットなど内作が可能か、外作が適切かの判断をします。
構成原材料や部品の構成が明確になった時点ですべての原材料部品の大体の価格の割り振りを検討します。既存原材料は、コストダウンの可能性を検討し、取引先から新しい価格の入手を始めます。
単価の高い原材料は、原材料全体に占める割合が大きくなるので取引先の選定、製造方法の研究、コストダウンのための改善アイディアなど開発購買部門ができる限りの情報を提供し、容認できる価格を明確にします。
原材料の新しい購入価格の入手と共に原材料価格の合計を試算し、製品価格に占める部品価格全体の妥当性が判断していきます。部品全体の価格が予測以内に収まれば、納期の確認と共に試作のために発注を開始します。
特に金型を使用する板金加工部品や樹脂成型部品は、金型の完成度で納期遅れが発生しやすいので日程管理に注意します。樹脂成型金型は、先行手配を必要とする場合があり、全体の日程管理表の作成と進捗状況をきっちり把握します。
そのほかの新規採用原材料は、納期の問題を発生しやすいので進捗管理に気をつけます。

(4)試作段階の開発購買機能
試作段階になると材料全体の納期や品質の問題の有無がわかります。開発購買部門は、新規採用原材料はできるだけ早くサンプルを入手し、信頼性テストを依頼し、品質を確認する必要があります。
この段階で、製品を構成するすべての原材料の価格を確定し、製品の見積原価の総額(第一次実績原価)が予定以内に納まることを確認する。算出した総原価が予定金額を越えることが明確になれば、単価の高い原材料を中心にコストダウンの検討し、価格交渉に入ります。商品を包装梱包する原材料価格も検討を忘れないようにしたいものです。

(5)量産段階の開発購買機能
量産に必要な原材料が確定し、原価総額が決定した段階で調達部門担当へ引き継ぎます。しかし、品質問題や納期遅延などトラブルが発生することがあります。官能検査を必要とする部品では、納入検査用の限度見本の作成も忘れないようにします。新規採用原材料では調達決定の経過を承知している開発購買部門が解決すべきことが多くなります。
取引基本契約書や品質保証協定書の交換は、決められた担当部署で実施します。

掲載日:2015/11/04