イグレン 加藤 文男
新製品開発のステップは、業種により異なりますが市場からの要望を把握し、新製品が企画され、設計製造され、製造され市場に提供されます。電子機器や電気機器では、企画段階で構想が固まり、開発設計部門が電子回路や電気回路を決定し、形や大きさなどのデザインや機構、構造が決定します。この段階で大方の使用する原材料も決まります。
一度新製品の構想が決まり、機構や構造が決まってしまうとこれを変更するために相当な労力と費用が必要となります。それまで決定に要した時間や労力も多くが無駄になってしまうことにもなります。決定した機構や構造、原材料のコストダウンをすることも難しくなります。
新製品開発の価格は、製品開発の初期の段階で決定してしまう割合が大きく、80%以上が初期段階できまると言われるほどです。従って、新製品の開発における開発購買機能は、非常に重要であり、各段階で充分慎重に進めなければならないことがわかります。
(1)販売数量を正確に予測する
新製品を要求する営業部門にとって大切なことは、新製品を開発した場合、どの位の数量を販売できるかをできるだけ正確に予測することです。新製品を量産する場合、樹脂成型や板金加工に金型を必要とするのが普通です。新しい金型には、金型設計の技術者や金型製造に係る製造技術者の工数など必ず大きな投資が伴います。
営業部門で大切なことは、新製品を発売した時のできるだけ正確に予測した販売数量の情報です。販売する見込み数が正しくないと本当に投資をして新金型を開発する価値があるかどうかの判断が難しくなります。金型を新しく作る場合、それに見合う数量の販売ができないと新しい金型を作る意味がないからです。
営業担当者は、「この新製品がこの価格であれば、1000台売れるとか10万台販売可能である」など新製品の販売数量目標をできるだけ正確に捉えて新製品企画会議で発表します。技術的に可能であるかとか価格的に可能かどうかは、まだ問われずに新製品の価値を正しく把握することです。 (2)「ないものねだり」をする営業部門の感性
営業部門は、市場において新しい機能や性能に関する製品の情報をお客様から最も早く入手できる立場にあります。営業が要求する新製品は、「このような特徴のある製品があれば必ず売れる」というものがあります。画期的な新製品は、お客様の要求を鋭い感性を持って受け取り、新製品企画会議に知らせることも重要です。
新製品開発では、企業の事業分野から企業規模、資本力そして、技術力を考慮し、自社にとって少し無理でも市場のトレンドや動向を見ながら、現在「ないもの」で近い将来たくさん売れるという情報を捉えて会社内の設計技術部門や製造部門に対して要求をぶつけることも重要です。販売数量をできるだけ正確に予測するということと矛盾しますが営業部門の要求は時には「ないものねだり」することも必要です。
現在市場に存在しないものを要求することが企画部門や開発設計部門を刺激して画期的な新製品を生み出すことに結びつく場合があります。1年先、3年先の市場を想定して、どのようなものが売れるかを考えるのが営業の重要な一面です。将来の市場を作り出すのが本来の営業ということもできます。
「ないものねだり」のに種を探し出して新製品企画会議に要求する営業の感性も大切にしたいものです。新製品開発の能力は、市場の要求を適切に把握し、対応する力といえるかもしれません。