33 製造業に必要な開発購買機能 2

開発購買で収集すべき情報

イグレン 加藤 文男

 営業部門が期待する本当に価値のある新製品はこの世の中に存在しない画期的な新製品です。しかし、そのような新製品はめったの開発できるものではありません。製造業を営む企業の営業部門では、新しい顧客や市場を拡げるために、常に新製品の開発に期待をかけますが当面販売を維持するために必要な新製品もあります。また、他社製品との比較から性能や機能の一部を補った改良品が必要な場合もあります。新製品として企画される製品には、各企業の事情により色々なレベルがあり、要求される性能や特徴も広範囲になります。
(1)新製品のレベル
性能や機能の改善や変更の程度により、次のようなものが考えられます。
まず、性能や機能が同じでコストを改善した、つまり、製品のデザインの一部を変更したマイナーチェンジ製品です。当面新製品ができるまで市場を確保するために必要な製品です。利益を改善するために製造方法や製造設備を変更して製造工程の歩留まりを改善した製品もあります。製品や部品の名称や型番などは同じで取扱説明書やサービスマニュアルなど全く変更することなく、市場に供給することができるレベルです。このレベルの製品は営業担当にとって満足できないレベルです。
また、製品の一部に組み込まれる原材料や部品の場合、性能を確保した上で材質や構造を変更する場合があります。原材料として互換性を要求される場合には、販売先の承認や許可を必要とする場合も必要となります。
次に性能を向上させたり、機能を追加した新製品があります。品名や型番を変更し、新製品として販売します。商品のレンジを確保するためにこの種の商品開発は良く行なわれています。利益を確保できないために機能や性能を変更し、利益の出る価格をつけて新製品として品名や型番を変更して販売されます。
最後が今まで市場に全く存在しなかった機能や性能を持つ新製品です。市場で最も期待されるレベルの製品です。
(2)新製品に必要な具体的特長や内容
次に新製品に要求される特徴や内容により、新製品に期待される具体的な項目を整理しておきましょう。
① 性能が高く、機能が多い製品
② 小型で軽く、丈夫で強い製品
③ 効率のよい製品
④ 使いやすい製品
⑤ 取り付けやすい(工事のしやすい)製品
⑥ 外観の美しい製品
⑦ 値ごろな(他社より安い)製品
開発購買機能で期待されるのは、上記のような特徴のある製品の開発、設計、製造するために有効な技術や工法、原材料、部品、新しい工具や設備、そして、新しい取引先を見つけ出すことになります。
(3)開発購買で収集すべき情報
新製品に要求される項目や製造工程で利用される内容を具体的に考えると次のようになります。
① 新しい特徴を有する技術
新しい技術とは、 従来になかった新しい機能を持った技術、更に高い性能を持った技術、精度の高い技術を意味する場合もあります。新しい技術は開発部門や設計部門がそれを十分評価し、製品に取り込む能力を有しないと成功は難しくなります。最近は、新しい技術や性能を持った部品や原材料として調達できる場合が多くなっています。
② 新しい原材料、部品
新しい原材料で要求される特徴とは、同じ機能を有する原材料や部品で従来よりも強い、軽い、加工しやすい、美しい、安いなど特徴のあるものです。また、同じ機能を持つ原材料で小型、軽量、効率が良い、性能が高い、機能が多い、取り付けやすいなどの特徴のある新しい機能を持ったものもその一つです。これらの特徴を有する原材料が見つかれば、その原材料、部品を採用することにより、他社よりも有利な機能を有する新製品を他社よりも安く市場に出すことができます。
③ 新しい工法・構造
新しい工法や構造とは、従来よりも「歩留まりがよい」など安く作ることができる工法や構造、「作業効率が良く早く」作ることができる工法や構造、「美しく」作ることができる後方や構造、また、製造工程において「安全に」作ることができる工法や構造でこれを採用することにより、他社よりも有利に製造することができます。
④ 新しい冶工具、設備
新しい冶工具、設備を見つけ出すことができれば、製品を「安く作ることができ」、「作業効率が良く、速く作ることができ」、「作業スペースが小さいところで」、「安全に」作業できるようになります。これも新しい原材料、部品、取引先以上の効果を生むこともできるのです。
⑤ 新しい取引先
新しい原材料や部品、新しい工法や構造が見つからなくてもこれらを有する新しい取引先でも良いのです。従来にない「高い技術力のある」、「新しい材料を使い、対応力のある」、「安く作ることができる」、「近いところにある便利な」取引先が見つかれば、新しい原材料、工法や構造に相当する機能や効果を期待できるのです。

 開発購買担当者は、常にこのようなテーマをもって見つけ出す行動することになります。

掲載日:2015/10/19