32 製造業に必要な開発購買機能 1

開発購買機能の必要な理由と適切な人材

イグレン 加藤 文男

 (1)製造業に必要な開発購買
製造業では、常に新しい技術、新しい工法、従来にない特徴を持った新しい原材料を探す必要があります。既存製品に改善を加え、コストダウンを図り、他社よりも少しでも有利な特徴を持たせる製品を販売する必要があるからです。市場では、他社に負けない特徴を有する新製品が期待されています。新しい各種情報に基づき新製品を開発したり、他社に負けない特徴を有する新製品を開発できない企業は、次第に市場を失い、経営状態を悪くしてしまいます。他社と比較し、特徴のない製品しか製造できない企業は他社より安い価格で対抗することになります。製造業における販売額や収益の確保は、競合他社より優れた機能・性能・価格等の新製品を企画し、製品に仕上げるかで決まります。特に技術革新の激しく、商品の寿命期間が短くなる電子機器、電気機器、機械機器などの業界では顕著です。従って、新しい技術、新しい工法、新しい製造設備、新しい原材料、又はこれを供給できる新しい取引先を見つけ出し、これらを評価し、採用し、品質や性能の改善や新製品の開発に結びつける機能が必要になります。
最先端の技術、製造設備や工法、更に価格の動向を含めて情報を収集し、整理し、評価し、いつでも供給できる機能が製造業には不可欠です。この機能が開発購買です。

 (2)開発購買は全社的な経営活動
新製品の開発は、市場の動向や顧客の要求を収集し、ニーズや嗜好を理解し、自社の技術レベルや製造能力を勘案し、新製品企画部門又は企画担当者が中心となって「新製品の企画」を開始し、企画提案書を作成します。
開発設計部門は、最先端の技術にたいへん興味を持っており、新しい技術を捜し求めています。他社にない特徴を持った新製品を開発したい、他社にない特徴のある技術を自社の製品に採用してみたいと常に考えています。開発設計担当者は、採用すべき、新しい技術や素材を調査し、その製品にふさわしい回路、機構、構造を検討します。
製造部門は、他社より短時間に製造できる方法や効率のよい製造技術(工法)や製造設備にいつも関心を持って情報を集めています。製造工程においてコストダウンを図ると共に新しい製品企画に応えられる新工法や設備を常に模索しておき、新製品に対応する準備をします。
資材購買部門は、常にコストダウンを意識して少しでも安い原材料を入手する努力をしています。原材料や部品を調達する窓口として、日ごろから自社の製品の利益を確保するためにもっと安く原材料を供給する取引先はないか、もっと高性能の原材料や多くの機能を持った部品を供給する企業はないかと探しています。調達・購買部門は、新製品に必要な新しい技術や要素に対応するための情報を入手し提供すると共に適切な品質の原材料や部品の購入先を開拓し、選択し、その能力を評価し、選択し、採用の可能性を検討します。
このように製品の改善活動や新製品開発を考えると開発購買機能は、営業から開発設計、製造、資材調達まで情報収集活動は、各部門の能力を最大に結集すべき全社的な経営活動ということができます。

(3)開発購買には専任担当者を配置したい
開発購買機能は、営業、企画、設計開発、調達、購買部門、そして製造部門と企業の各部門が相互に協力して、総合力を発揮しなければならないのです。各部門のベクトルが合致し、創業力が発揮されたときに他社に負けない新製品が生まれるのです。
大手の企業や中堅製造業では、新製品開発するために常にいくつかの新製品開発をテーマとして持っており、新しい情報の入手に関心を持ち、情報を収集し、整理し、いつでも提供できる体制情報収集を行なう開発購買部門を持っています。
最近、新しい技術や工法、原材料に関して膨大な情報が供給されていますがこれに対応するために開発購買部門を設けて専任担当者を配置することが大切です。新技術、原材料、冶工具や設備、新工法など新しい情報を収集し、整理し、一箇所に集めて、いつでも使用できる状態にしておくことが重要です。しかし、企業規模により、常時新製品開発テーマを持たない場合や開発購買専任部門をおくことができない場合もあります。この様な場合には、テーマごとに担当者を決めておき、その担当者に情報が提供されるような体制を持っておくことも考えたいと思います。

(4)経験豊富なベテランの活躍できる部門
開発購買担当者は、社内の専門技術や製造技術を把握し、従来の取引先や市場の動向も理解できる知識と経験を持った人材が適切です。これまで資材購買部門において契約担当、調達担当、材料管理担当と経験を積んだ担当者がその能力を十分発揮できるのが開発購買です。資材購買の各機能を経験し原材料に関する情報を熟知し、価格の交渉や納期管理などを通して取引先の技術レベルや品質管理能力を評価するなどその勘所を理解していきます。資材購買部門の材料管理担当者、契約担当者や調達担当者は1日も早く開発購買担当になりたいと思っています。
一方、工場部門や設計技術部門でモノつくりや設計の経験を通して、資材購買担当とは異なった立場から多くの知識と経験をもった人材も貴重です。資材購買担当では、培うことのできない開発購買に関する能力を知識や経験を持っています。製造部門、開発設計部門を担当した経験者は、資材購買担当では得られなかった能力を十分発揮できる部門なのです。

掲載日:2015/10/16