イグレン 加藤 文男
資材購買部門は、情報収集機能が大切です。特に購入したい原材料の妥当な価格やそれを安心して調達できる購入先です。最近インターネット販売が非常に便利になったので若い人たちは、価格の情報だけでなく、多くの情報の入手については上手かもしれません。初心者や新入社員が資材購買部門を担当するにあたり、戸惑うのは価格に関する情報の収集先と収集方法です。
原材料の最も重要な情報は、自社内にあります。資材購買担当部門には、従来の取引先があり、その取引先から購入した実績価格があります。原材料の情報は、これが最優先であることは既に述べたとおりです。しかし、会社にとって初めて調達することになる原材料が出てくることがあります。
ここでは、資材購買担当になった初心者のためにいくつかの情報の入手方法を挙げておきます。
ただし、これらの情報は、一般的なもので資材購買担当者が知りたい情報がそのまま掲載されているわけではありません。いくつかの情報元から入手したい情報を集めて比較検討が必要です。必要な情報として使用できるまで時間もかかるかもしれません。それを承知の上で情報収集方法について知っておくことも大切です。
1 価格情報専門出版物
定期的に原材料の価格情報が記載された出版物が発行されています。ぜひ活用していただきたいものです。ここで紹介するのは、資材購買のための資料ではなく、官公庁の入札価格および民間企業の予算計画、設計、積算、資材調達、入の計算などの目的で発行出版されています。「積算資料」「建設物価」「物価資料」があります。これらは毎月定期的に発行されています。概算価格として参考にできます。
(1)積算資料 一般財団法人 経済調査会発行
「積算資料」は官公庁および民間企業の予算計画、設計、積算、資材調達、監査などの各部門で必要な基礎資料を提供することを目的とおり、資材、部品関係のおおよその現在の価格を知ることができます。しかし、取引価格は、取引条件(取引数量、納入時期、荷渡し場所、決済条件)が同じでも取引相手(信用度、継続性など)や経営戦略により異なります。取引価格は、取引者間の交渉により決まるのでこれらの資料に記載された価格はあくまでも参考です。
① 共通資材
鋼材、鋼材二次製品、非鉄金属、溶融亜鉛メッキ、スクラップ、セメント・生コンクリート、骨材・砕石、型枠材、木材、塗料、席夕製品・燃料、薬品類、足場・支保材、換気用送風管、保安用品、土嚢、建設機械器具など各種設備の賃貸料金
② 土木資材
舗装用材、防護柵、道路付帯設備資材、道路標識・道路付属物、側溝類、融雪危惧、橋梁用資材、トンネル用資材、配管材、マンホール本体・ふた、水路、積みブロック、火薬、止水材、樹木、肥料・農薬
③ 建築資材
建築用コンクリート板、防水材、石材・タイル、屋根・とい、建築金物、左官材、建具・硝子、内外装材、避難器具
④ 電気設備資材
電線・ケーブル、通信ケーブル、配線材料、配電器具、証明用設備、通信・情報設備資材、蓄電池、帯電用品
⑤ 機械設備資材
配管材、配管付属品、給排水衛生設備、タンク、消火設備資材、空調設備資材、自動制御機器、浄化槽
⑥ 各種料金
用紙、情報サービス料金、人材派遣料金、地質調査、ビルメンテナンス料金、環境測定分析料金
(2)建設物価 一般財団法人 建設物価調査会発行
「建設物価」は、建設工事で使用する約30種類の各種資機材の価格や工事費、賃貸料金等を全国の各都市で毎月調査し、その結果を収録している総合物価版です。建設業界注目の特集記事や建設資材関連の統計資料も掲載しています。原材料のおおよその価格については、これらの資料で知ることができます。参考にすると良いでしょう。建設物価には、資料編、工事費編、管理資料編があります。
資材編には、鉄鋼、鉄鋼二次製品・非鉄金属、セメント生コンなど25種類の資材情報が掲載されています。電気機器製造業で使用される情報として、ケーブル、配線材、配電・配線器具、通信機器 などの情報があります。工事費編には、工事費、調査費、保守点検料金の3種類が掲載されています。管理資料編には、労務費・サービス料金、建設副産物処理費・処分情報の2種類の情報が掲載されています。
(3)物価資料 出版社 一般財団法人 建設物価調査会発行
前記の建設物価と同じ出版社ですが印刷料金、用紙、梱包材料、事務・製図用品、フィルム関連用品、事務機器、リース・レンタル、燃料・潤滑油、スクラップ・繊維、環境保全・備品、電気機器、生産財等を業務管理に必要な価格情報をとりまとめた「物価資料」という別冊があります。
価格編では、印刷料金、用紙、梱包材料、事務・製図用品、フィルム関連用品、事務機器、リース・レンタル、燃料・潤滑油、スクラップ・繊維、環境保全・備品、電気機器、生産財等を掲載しています。入手できる資材等の種類と項目は次のようなものがあります。
① 印刷・製本料金
印刷料金見積もり概要、DTP製作料金、製版、刷版印刷料金、製本料金、フォーム印刷、電子ファイリングの解説、デジタル出力の解説、ファイリング料金、電子複写料金、製本料金、マイクロ写真料金、地図調整、各種製作料金事例、組見本、オンデマンド印刷の解説
② 用紙
用紙に関する流通組織や経路、紙の規格、紙の価格、裁断料金、環境マークの解説、パルプの解説、板紙の解説
③ 梱包材料
段ボールの解説、段ボール箱の形式
④ 製図用品
トレーシングペーパー、ケント紙、方眼紙、設計用紙、OHPフィルム、製図用フィルム、フィルム関連用品
⑥ リース・レンタル
リースとレンタルの違い、算出法、OA機器レンタル料金、什器・備品レンタル料金、植木レンタル料金、レンタカー料金(対法人、対個人)
⑦ 燃料・潤滑油
灯油、ガソリンなどの燃料、潤滑油、グリース、ガス
⑧ スクラップ
鉄屑・非鉄屑の解説、古紙の解説
⑨ 繊維
生地、カーペット、カーテン
⑩ 環境保全・備品
公園施設、資材、フェンス、消火器、厨房器具、ガス給湯器
⑪ 電気機器
照明器具、蓄電池
⑫ 生産財
鉄鋼、生コン、セメント、骨材、木材、合板、内外装材、合成樹脂板、電材、配管材
⑬ 資料編
防災設備保守・点検料金、昇降設備保守・点検料金、清掃管理費、飲料水槽清掃費、 クリーニング参考料金、リネンサプライ参考料金、派遣料金
2 インターネットの活用
家電製品や電気機器に使用される抵抗器、コンデンサー、コイル、IC、LSI、スイッチ、トランスなどの電気部品、電子部品の価格は、積算資料や建設物価には、一部しか記載がありません。これらの部品については、個々にメーカーやその販売代理店などから入手することになります。
電子部品の型名を入力するとこれらの原材料を販売する商社やメーカーが入手できる数量や数量毎の購入価格が掲載されていて非常に便利になっています。特殊な型名でなく標準的な型名の部品は、数社の情報を見て、購入価格の比較も可能です。要望に合致した取引先と交渉が可能になります。
(1)販売代理店や商社のホームページの活用
電子機器や電気機器に必ず使用するトランス、各種スイッチなどの電気部品及び抵抗、コンデンサー、IC、LSIなどの電子部品は、先にあげた定期の出版物には掲載されていません。
種類や仕様が多岐にわたるのでこれらの部品の製造企業のホームページや代理店・専門商社が掲載するホームページが便利です。電子部品などは、設計技術者が指定した型式を入力すれば、購入数量や納期なども知ることができます。もし、価格に疑問があれば、複数の代理店や商社のホームページにアクセスし、購入可能数量や価格を比較することができます。コンデンサーや抵抗などのチップ部品も実装の際のリール対応、数量が少ない個別販売など価格に大きな差が出ますが直ちに価格や納期を確認できるメリットがあります。数量の少ない購入も気にせずに情報収集が可能です。
(2)企業のホームページの活用
板金プレス部品や樹脂成型、金型製造など特に指定する原材料については、従来の取引先が優先して検討します。しかし、技術レベルや品質、価格などに疑問が出れば、ネットで新しい取引先を探すことも可能です。金型ならば、仕様材質、加工精度などキーワードを入力することで対応可能な企業が見つかります。現在の取引先で品質トラブルがたびたび発生するようであれば、その会社は適切な技術を持たない取引先かもしれません。新しい取引先に変更することも検討しましょう。新しい取引先は、その信頼性、品質レベルなど取引決定まで検討に時間を要するので時間的に余裕を持って交渉できるよう準備をすれば十分対応可能な取引先を見つけることができます。
3 業界新聞
資材・購買担当者が扱う資材の価格は、市場の動向により変動します。業界新聞から調達価格を直接入手することはできませんが将来の価格動向を予測する情報が得られます。「黄銅棒の価格上昇」「マグネシウム地金下落」「ゼネコン 鋼材発注前倒し」などと大きな見出しが業界新聞を賑わします。これらの情報はいずれ資材購買価格に影響します。個々の原材料の価格は直接掲載されませんが、価格の変動する要因やタイミングを予測することができます。
原材料の一部ですが鉄鋼、鋼管、希少金属、軽合金、石油ガス、用紙、貴金属生コンなど主要材料や製品の東京と大阪における卸相場が毎日掲載されている経済誌・業界誌もあります。これらの価格変動情報が直ちに購入価格に反映されるとは限りませんが、大きな変動があればいずれ購入する反映されます。価格の高騰は、調達先からいずれ直接値上げの交渉があるでしょう。価格が下がった場合は、調達先とよい関係がなければ値下げの連絡はありません。各資材購買担当者が市場の動向を見て値下げの交渉をする必要があります。
関連のある主要材料については、これらの資料を基に各自グラフ化するなど、価格のトレンドを確認できるようにしておきたいものです。価格交渉の際に理論武装するための参考にできます。
皆さんが担当する原材料が掲載される業界新聞を知り、注意深く見ておきましょう。