イグレン 加藤 文男
1 自社の資材購買部門の情報
自社の購買履歴、自社の調達履歴を活用
まず重要なのは、自社の担当者や先輩たちが持つ情報、つまり購買履歴や調達履歴である。調達履歴には、調達原材料名だけでなく、最近の調達価格や入手した調達先の品質レベルなど信頼性に関する情報もある。調達先の情報には、直近の調達原材料に関して調達先が起こしたトラブル事例なども記録してあるものです。社内にある資材購買に関する情報が最も入手しやすく貴重なのです。
直近の調達において特別問題がなければ、同じ調達先から同様の品質の原材料を安心して調達できると判断してよい。同じ原材料の調達に関しての第一優先調達先は、前回の取引先である。最も手間を要さず、調達の交渉に入ることができる。
取引先の品質や信頼性については、受入れ検査担当者や品質管理部門、品質保証部門の担当者が正しい情報を持っています。調達先を決定する前にこれらの部門の担当者から最近の正しい情報を入手しておきます。また、検収担当者が情報をよく把握しています。受入れ検査で不合格になれば、仕入先が選別作業にやってきたり、不良品の引き取りにやってきます。品質トラブルが発生すれば、検収できないので情報が直ぐに伝わります。常に問題を発生する取引先は検収担当と話を聞くことで情報収集することで正しい情報かどうかの確認など「情報の裏を取る」こともできます。
資材購買担当初心者は、自社の持つ調達先についてできるだけ多くの情報を入手し、整理します。全く同じ原材料でなくても、同種類のものであれば、当方の仕様を明確にして見積書を入手する取引先の一つにしておき、必要に応じて見積書の請求をします。通常の信頼関係があれば、その取引先は、当方が初心者であっても無茶な価格を提示してくる心配がありません。
電子機器、電気機器を製造する会社であれば、電子部品、電気部品、機構部品、ダンボールなどの包装梱包用外装部品など業種別に取引先リストがあるはずです。設立したばかりの会社でなければ、調達する原材料により、調達先リストが存在する。資材購買担当の初心者はこれを入手して、頭に入れることから始めましょう。
2 自社の開発設計部門
次に重要なのは自社の開発部門や設計部門の担当者の持っている情報です。新技術、新製品に関して設計技術者は、技術雑誌や業界誌などから常に最先端の技術に関する情報を勉強しています。そして、新製品の開発時に自分の持つ技術を活かしたいと常に研究しており、そのチャンスを狙っています。逆に資材購買部門が新しい取引先の採用を敬遠する動きがあり、技術者にとってハードルが高く言い出せない場合もあるのです。技術部門の担当者には、色々な取引先から展示会の案内なども届いて最先端の技術に接することが多く、取引先に関する情報を持っています。資材購買担当者は、社内の技術者がどのような将来構想を持っているか常に関心を持って聞く耳を持って欲しいものです。
新しい取引先については、その企業の経営状態や品質に関する信頼性など調査が必要であることは勿論です。安易に新しい取引先を採用し、企業文化や慣習の違いなども含めてトラブルの原因になっては問題ですが最先端の技術や技能を有する企業に関する情報源として、自社の技術者から情報を入手し、折に触れてその企業の経営状態や信頼性を確認して将来の取引先のリストに加えておくことも資材購買の担当者にとって重要です。ぜひ心がけておきたいものです。
3 社内の従業員からの情報
社内の従業員がパソコンを使用できる風土があれば、誰でも記入できるフォーマットを作成しておき、原材料の、取引先に関するトラブル事例、品質問題事例などを自由に記入する制度を設けても良い。 ただし、従業員がパソコンの使用に慣れており、気軽に社内でネットを使用できる環境にないと情報収集も難しい。また、従業員が多忙でそのような時間が取れるとは限らない。やはり、自分で収集した情報をこまめにメモしておき、フォーマットに埋める努力がベストな方法です。
4 原材料の種類やジャンルごとに調達先リストを整理する
資材購買部門にとって、信用のできる取引先が財産です。できるだけ多くの取引先の情報を入手し、整理しておくことが大切です。もし、社内にこの種のリストがなければ、少し時間を掛けてでも作成することを始めます。業種により、得意な分野があるのでその業界におけるレベルなども把握し、リストに追加することを薦めたい。資材購買部門の担当者は、取引先の工場など訪問する機会は結構あるものです。競合する企業の技術者の場合機密事項もあるので工場内を見せることには警戒されますが少しでも販売を増やしたい営業担当者は、資材購買担当者には宣伝も兼ねて見せてくれるものです。その工場の品質レベルや特徴などできるだけ記録し、リストに加えて必要な時に使えるように準備をしておきたいものです。
資材購買担当者として情報を整理する際に気をつけたいことは、収集した情報が正しいものかどうかを常に確認をすることです。個人的な感情で間違った情報を提供されることもあるからです。