イグレン 加藤 文男
資材購買担当者にとって原価計算は原材料を調達するときに購入価格を決定する基礎となり、たいへん重要なことです。製品の原価計算も原材料部品の原価計算も基本的な考え方は同じです。
(1)原価計算とは
原価計算とは、製造するために要する費用を計算することです。これらの原価を単位当りで計算する手続きです。たとえばテレビ、ラジオや自動車等1台作るのにかかった費用を計算してみます。製造原価は、材料費、労務費から構成されます。従って、1台当りの原価は次のようになります。
電気機器製品1台あたりの原価計算
= (原材料部品など外部からの総購入価格 + 総加工費)÷ 生産台数
この考え方は、部品を製造する場合も基本的に変わりません。
加工部品の原価計算
= (原材料など外部からの総購入価格 + 総加工費) ÷ 生産個数
(2)原価計算の方法
原価計算の式に従って、原価を計算する方法を検討してみます
① 材料費の計算
まず材料費の計算です。製造業における材料費は相当大きな比重を占めます。実際に加工で
使用される際に必要な量(所要量)はどれだけか、単価はいくらか、を検討します。更に屑は
販売が可能な場合があります。屑量・屑単価等についても十分な検討が必要です。
次に材料のロスについて検討します。特に材料ロスについてはその発生を最小限になるよう
に工夫が必要です。ロスには部品材料を加工する上でどうしても避けられないロスと加工ミス
の様に改善できるロスの二種類があります。どうしても避けられないロスは、その改善などを
確認した上で承認します。改善可能なロスは、原則として認めることはしません。材料につい
ては、同じ性能・機能を確保できる代替材料を検討し、ロスをできるだけ少なくする工夫と改
善を重ねる努力が必要です。
材料費は直接材料費と間接材料費にわけられます。間接材料費には補助材料費、消耗工具・
器具備品費があります。補助材料費はそれが金額的に明確に把握できるときは材料費に計上
し、金額的に少額で明確でないときは一般経費に計上します。消耗工具・器具・備品費は材料
費に計上しますが、原価的にウェイトが高い場合は別個に機械費の一部として計上します。
屑を回収し、販売できる費用は、材料費から除きます。
* 材料費の計算
材料費 =(材料費 + 不良引当)× 材料価格 - (屑回収量 × 屑価格)
② 加工費の計算
加工費とは、人、機械、設備を用いて仕様書(図面・検査仕様書等)に基づいて材料・部品
を加工する時に発生する費用です。この場合、人、機械、設備に要する単位時間当たり費用を
加工費レートといい、材料および部品を加工して所要の部品を得るのに必要な時間加工工数と
いいます。加工費は、材料を加工し製品を作るのはその加工にたずさわっている人及び機械・
設備など製造に関連するために必要な費用で構成されます。人によるものは賃金として支払わ
れ、機械によるものは機械の購入費さらにそれを運転するための動力費等が必要となります。
加工費は、賃金に附随するものは直接労務費に集約(集計)し、機械にかかるものは機械費
として集約し計算します。直接労務費と機械費のいずれにも集計できない費用を一般経費とし
て集計します。一般的には、経費を直接労務費と機械費に比率配分し、加工費レートの算出を
行ないます。
* 加工費の計算
加工費 = 加工工数 × 加工費レート
加工費レート = 直接労務費 + 機械費 + 必要とする一般経費
③ 加工工数の計算
加工工数は製造方法によって大きく変わります。製造方法の改善により実際の数値は変動が
あるので必要に応じて修正します。加工工数は、下記の時間を加算した時間となります。
・ 正味作業時間 機械時間 + 操作時間(材料の挿入・取り付けなど)
・ 付随作業時間 材料の製品揃えなど
・ 附帯作業時間 運搬時間 + 準備段取り時間
・ 余裕時間 疲労余裕時間、作業余裕時間、職場余裕時間など
④ 加工費レートの計算
加工費レートとは、加工に必要な直接労務費、機械費、一般経費を含めたものの単位時間当
りの費用を言います。加工費レートの算出の方法は、作業の主体が機械か人かなどの違いに
よって幾分異なります。
加工費レート = 直接労務費 + 機械費 + 一般経費
⑤ 直接労務費の内容
直接労務費とは、普通直接作業者に支払われる賃金のみをいいます。原価計算の方法では、
賃金のほか賞与引当金、福利厚生費、退職給与引当金等の費用から構成されます。直接作業者
の基本賃金・職務手当・家族手当・精皆勤手当を含めて基準内賃金といいます。賞与引当金、
法定福利費、任意福利費、退職給与引当金、深夜手当(交代勤務)もきっちり計算します。
・ 基準内賃金(基本賃金、職務手当、家族手当、精皆勤手当)
・ 賞与引当金 年間の賞与月数を計算します。
・ 法定福利費 料率は、官庁資料により決定します。
健康保険料、厚生年金ホ険料、雇用保険料、労災保険料などが含まれます。
・ 任意福利費は、交通費、保険費、リクレーション費、賄費、寮費などを言います。
一人当りの任意福利費を計算します。
・ 退職給与引当金
・ 深夜手当 社内規定により計算します。
⑥ 機械費の内容
機械費は、機械を購入、取得する際に必要な費用、機械・設備の運転に必要な費用及び機械
が装置されている工場建物に関する費用の3つがあります。機械を購入、取得する際に必要な
費用は、機械や設備の減価償却費、融資を受けた場合は、その金利及びその後の修理費等を計
算します。
* 機械設備を購入取得する際の費用
・ 減価償却費
・ 金利
・ 修理費
・ 固定資産税
・ 保険料
* 機械や設備の運転に必要な費用
・ 基本料金 設備1KW当り1ヵ月につき支払う契約基本料金
基本料金 = (所要電力 × 基本料金) ÷ 月間実働時間(分)
・ 電力量料金 1KW・Hにつき支払う電力料金
電力量料金 = 所要電力 × 電力量料金 × 負担率 ÷ 60(分)
電力量料金の算定には、使用機械の負担率を考慮します。負担率とは、ある期間の平均電
力量をその期間の最大電力量で除した値(率)を言います。
* 機械が装置されている工場建物に関する費用
建物の減価償却費及び購入に際し、融資を受けた場合の金利及びその後の修理費などを計
算します。
・ 減価償却費
・ 金利
・ 修理費
・ 固定資産税
・ 保険料
○ 減価償却について
機械、設備、建物は、使用するに従い古くなりその価値は減少し、買い替えが必要になり
ます。この固定資産の価額が時間の経過と共に減額することを減価償却といい、その減価
額を減価償却費といいます。減価償却費の計算の仕方には、定額法と定率法の2通りの方
式があります。
⑦ 一般経費の内容
一般経費とは、主として製品又は機械別に直接捉えにくい費用を言います。上記の機械費に
集計できない費用、例えば、役員・事務員等の給料・手当や事務所の減価償却費などであり、
また補助材料費や消耗工具費のなかで製品又は機械別にとらえることが容易なものであって
も、金額的に少額なものは一般経費として取り扱います。
* 間接者の人件費
・ 間接者の給料(含む役員報酬)
・ 間接者の賞与引当金(除く役員)
・ 間接者の法定福利費
・ 間接者の任意福利費
・ 間接者の退職給与引当金
* 建築費 (倉庫・工場事務所・管理部門の事務所)
* 事務管理費
・ 事務消耗品、会議費、交際費、旅費交通費、広告宣伝費、図書費、租税公課、教育訓練
費、電力ガス水道費
* 消耗工具・備品費