20 もしあなたが調達担当に配属されたら 5

Ⅲ コストダウンの基本 ムダの排除

イグレン 加藤 文男

 ムダをなくする

 円安になってもコストダウンの要求は尽きないものです。品質のトラブルの発生や価格がさがらない原因の一つにムダの存在があります。ムダを省くことにより、品質のトラブルも少なくなります。もしムダの存在に気がついて改善できれば、その多くがコストダウンに結びつき、この部分のコストダウンは、直接利益に結びつきます。
 工場だけでなく事務所においても多くのムダを発見できます。多くの工場においてはQC活動で既に相当ムダを改善していることも考えられます。しかし、事務所におけるムダの改善には手がついていないことは多いようです。事務部門が工場にムダを作らせたり、ムダなことをさせたりしている場合も多いのです。
 排除したいムダの例とムダの見つけ方、ムダを除去するヒントを上げておきます。これらのムダを徹底的に排除することに取り組みたいものです。

(1)排除したい7つのムダ
 ここで排除したいムダを考えて見ます。工場内のムダを中心にあげていますが、事務部門がムダなことをさせていないかの観点でも検討してみましょう。
① 作り過ぎのムダ
  工程間のバランスが悪く、一部の工程では後の工程よりも作りすぎている例があります。工程
  途中の中間在庫として滞っている状態でこれは全てムダです。
② 手待ちのムダ
  逆にバランスが悪いために一部の工程の作業者が作業待ちの状態になっている状態です。この
  作業者が待っている時間は全てムダになっています。
③ 運搬のムダ
  物を移動させる運搬は、できるだけ少なくしたいものです。運搬の労力や時間にはコストがか
  かっているからです。
④ 加工そのもののムダ
  加工する作業は、必要欠くべからざる作業のように見えますが、この加工作業はできるだけな
  くしたいものです。加工そのものがなければ直ちに次の工程へ送ることができ、効率は良くな
  ります。加工そのものがムダという考えをしたいものです。
⑤ 動作のムダ
  ひとつの作業から次の作業に移る際にそれをつなぐ動作が必要になります。この動作は、すべ
  てムダという考えでできるだけ少なくしたいものです。
⑥ 不良を作るムダ
  不良品を作るために要した時間と労力はすべてムダになります。不良品を作れば、手直しをす
  るか、分解してもう一度作り直すことになります。時には、使用した部品が再び使用できずに
  捨てられることもあります。その部品を作るために要した作業時間はすべてムダになるので
  す。終わってしまった作業は、ムダになっても見えにくいので特に注意を要します。
⑦ 在庫のムダ
  原材料だけでなく製品は、在庫としておいて置くだけでは、価値を生みません。出来上がった
  製品は、直ちに出荷したいものです。製品を置いておくスペースは、必要のないムダという考
  え方をします。

(2)ムダの見つけ方
① 仕事や作業の目的に照らしてみる。
② 見えないムダを見える形にする。
③ 仕事の流れに着目して図解する。
④ モノ作りの作業単位を要素分解して時系列のフローにする。
⑤ 設備のロス(遊休設備の活用)

(3)ムダを除去するヒント  
① なくすることはできないか。
  その部品をなくす(省く、削除する)ことはできないか。
  その工程は省略できないか。
② もっと良い方法はないか。
  他の人の作業工程を互いに見て検討し、もっとよい方法はないかを考えます。
③ 結合してみる。
  二つの部品を結合してひとつにできないか。
  二つの工程を一つにできないか。
④ 分離してみる。分けて考える。
  工程を二つに分けることで作業が楽にならないか、作業効率が上がらないか。
⑤ 順番を変えてみる。
  取り付ける部品の順番を逆にしたらどうか。
  作業の順番を変えられないか。

(4)VA/VEの視点からのヒント
 ムダの排除のほかにコストを下げる手法として、VA/VE手法があります。少し専門的になりますので社内の専門家にお願いしてもよいでしょう。VAとは、価値分析のことです。下記のように本当に価値があるかどうかの確認チェックリストは、ムダの排除のヒントになります。参考までに記載しておきます。
 ただし、下記の内容は、設計変更や仕様変更が伴いますので製造部門が勝手に変更できないので注意しましょう。
① この部品は除けないか。
② 機能の組み合わせ、分割はできないか。
③ 作業を複合、組み合わせ、または簡単にできないか。
④ 新製品、新材料が出たことを知っているか。
⑤ 機構、構造、形は変えられないか。
⑥ 代替材、代用品はないか。
⑦ 市販品、標準品は使えないか。
⑧ 公差はゆるくできないか。 無理な公差を要求していないか。
⑨ 生産方法は変えられないか。
⑩ 新しい加工法はないか。
⑪ 工程数は減らせないか。
⑫ 検査は無くせないか。
⑬ 不用作業はないか。
⑭ もっと安く買う方法はないか。
⑮ 供給仕入先は適正か。
⑯ 調達のやり方を変えられないか。
⑰ その帳票類は本当に必要かその整理はうまくいっているか。

掲載日:2015/07/14