イグレン 加藤 文男
調達担当の役割は、契約担当者が発行したすべての原材料を注文書の日程どおりに入手することです。日程どおりに入手するといっても取引先が注文書どおりに納入してくれればよいのですが簡単ではありません。取引先における連絡ミスや原材料の入手遅れ、取引先の製造工程における品質トラブルなど問題が起こります。これらは、すべて納期に関係します。担当する原材料の種類や取引先が多数になるとすべてを納期通りに入手することは大変なことなのです。コストダウンの相談を受けることも合います。納期管理と同時に取引先からのさまざまな相談に対応することも調達担当の大切な役割です。
以下、調達担当者の主な業務を考えます。
Ⅰ 納期管理
(1)進捗状況の把握
注文した原材料を納期通りに取得するために取引先の進捗状況を事前に把握することから始まります。納期管理は、取引先別、製造機種別、プロジェクト別など注文したリストなどによって行ないます。納期は注文書の情報だけでなく社内の在庫の把握も大切です。すべての原材料が工場で使用する日程に間に合わせることです。
もし、納期遅延など異常の情報を入手した場合には、直ちに上司に報告すると共にその原因を調査し、確定納期を確認します。
納期遅れの発生する原材料や取引先は、決まっていることが多いものです。日ごろの取引から調達担当者は、納期遅延の傾向がある取引先の情報を入手し、できるだけ効率のよい進捗管理をしたいものです。
(2)注文残の管理
納期遅延が明確になった原材料は、「注文残リスト」を作成し、管理をします。注文残管理は、種類・品目が少なければ一つのリストで管理します。注文残リストは、関連部門に連絡し、情報を共有します。注文残リストに記載の原材料の修正納期(確定納期)は、逐次報告します。
注文残リストに記載される原因として次のようなものがあります。
① 注文書を発行したが取引先が受注できなかった
別の会社に注文書を作成し、発行した
② 注文書を発行した後、最初から納期遅れの連絡があった
③ 工程のトラブルで納期遅れの発生した
納期が迫り、指定納期から遅れが明確になった品目については、自社の工程の生産進行状況(消費動向)や在庫状況を確認し、必要に応じた情報を伝達し、できるだけ製造納期に影響しないよう配慮をします。
(3)納期遅延日程の連絡
製品は、構成する原材料が1点でも欠品があると完成しません。納期遅延が明確になった原材料は、その情報を必ず社内で共有します。納期遅延の情報は、上司や製造部門だけでなく、販売を担当する営業部門も含みます。製造工程やプロジェクトが納期遅れによる被害をできるだけ少なくする対策が必要です。
① 製造部門への連絡
納期後れの情報は、欠品する原材料により製造する製品の順番の変更、製造工程の変更など段取りを調整し、できるだけロスの発生を少なくします。従って、納期遅延の情報は正確でなければなりません。取引先との良い信頼関係を持ち、できるだけ確実な日程を取得します。
② 営業部門への連絡
新製品は、営業部門が販売先納期を約束していることが多いものです。製品の販売が遅れると会社の経営にも影響します。製造部門の段取り変更などで納期遅延が回復できれば問題は解決しますが納期遅延の回復には、全社的な協力体制が必要になります。
納期遅延は、情報を早く入手し、連絡することで社内の関係部門が協力して、その回復を図り、その被害をできるだけ少なくすることです。
(4)納期遅延の原因と対策
納期遅延が毎日のように発生しては困ります。その原因を見つけ出し、その根本原因を排除し再発を防止しなければなりません。
納期の遅延の発生原因には、自社に起因するものと取引先に起因するものがあります。しかし、納期遅延は、自社の設計部門の「最終図面の変更」「仕様書の最終確認の遅れ」など身内に起因するものが結構多いものです。
① 自社に起因する納期遅延
・取引先の能力把握不十分
これは納期を管理する担当者つまり調達担当者の責任です。始めて取引先する相手先によく発
生します。新しい取引先の生産能力、技術能力、日程管理能力、品質管理などの能力を十分把握
しできないために納期遅延になります。
取引先担当者の能力と信頼性(管理能力)と共に最初の打ち合わせの段階で製造工程を確認す
るなどして精度をあげることが納期遅延防止のポイントです。
・当方の設計変更・仕様の変更
本来注文書が作成される時点で仕様書や図面が完成しているのは普通です。しかし、新製品に
採用された原材料の場合、取引先と打ち合わせで注文先は確定しても最終図面が完成していない
ときや打ち合わせの後で仕様が変更されたときに発生します。設計者から調達担当者に情報が伝
わらないことが原因です。
・当方の日程変更
注文書が作成された後に営業からの要請などで生産日程が変更になり、調達担当者に情報が伝
わらないことが原因で起こります。このように社内に起因する納期遅延は、社内の情報の伝達や
連絡不備が多いのです。調達担当者の責任ではないのですが設計部門や営業部門など関係者と連
絡を密にして正しい情報を入手することが大切です。
② 取引先に起因する納期遅延
・取引先担当者の信頼性
・原材料のトラブル
・取引先の品質トラブル
・工程管理・品質管理体制の不備
・製造機械・設備の故障
最初の取引を開始する際の調査が不十分のために当方の期待に応える能力がない取引先を決定
したことに起因します。納期の遅延が発生しそうな取引先については、発注した段階から生産現
場の確認や製造工程を時々確認するなどして取引先の実力を正しく把握しておくことです。
取引先の進捗状況が隠されることなく調達担当者に情報が伝わるように人間関係を構築するこ
とも大切です。状況が把握できれば、必要に応じて自社の品質管理・品質保証部門にその品質問
題の原因追及とその解決の支援を依頼し、遅れを取り戻すことも可能になります。
同じ取引先において納期遅延が多数発生する場合は、受注能力、受注体制、製造工程の品質管
理体制など十分でないことが多いので「要注意取引先」として新しい取引先に変更することを契
約担当者に提案することも必要です。
(5)原因・再発防止対策の記録
納期遅延の原因 ・対策の記録は、常に整理し、購入履歴として再発防止に使います。
改善対策について非協力的な取引先については、次回注文の際、改善変更の案を作成し、社内
で定期的に検討します。
① 注文日の前倒し 注文書作成日の変更
原材料によって、自社が設定した納期に無理があるかもしれません。取引先との情報交換を
密にし、注文書の発行を早めて、納期に余裕を持たせる対策も必要です。
② 取引先の変更
納期に関して非協力的な取引先、改善できない取引先は、契約担当者と相談し、次回、又
は、翌月の取引を取りやめ、新しい取引先を見つけるよう提案します。
新入社員として調達担当に配属されることがあります。小規模の会社では、契約担当で注文書を作成送付し、納期管理も担当するのはよくあることです。
取引先の電話番号と担当者を知らされて、原材料の納入日程に問題はないかどうかを確認していく作業です。突然、取引先ごとに作成された納期管理のリストを渡されて、戸惑うかもしれません。これが納期に間に合わせるための進捗状態の把握です。先輩社員の作業を見ながら挑戦しましょう。
新入社員は、元気のよさが大切です。がんばりましょう。