12 品質を確保するための契約

イグレン 加藤 文男

 前回は、注文書に記載すべき内容を確認しました。このように全てを網羅した注文書を作成し、送付することで資材購買担当者は、安心して良いでしょうか。注文した原材料が納期に届いてもそれが仕様書の内容と異なっていたり、不良品が混入していると困ります。工場内に原材料が供給されて、組立て製造され、製品の完成近くになって部品の品質不良などが確認され、製造をやり直すこともおこります。

 まず、納入された原材料は、仕様書通りでなければ困ります。正しく機能しない部品や十分な性能を持っていない不良品が混入していると製造した製品が十分性能を発揮できません。取引回数や取引量が多い企業では、調達する原材料の品質を確保するために契約書を交わしています。これを「品質保証協定書」といいます。「品質保証協定書」の交換は、取引基本契約書を取り交わす際に一緒に行うのが普通です。これも契約書の一つです。

 品質保証協定書には、納入する目的物の品質は発注者の仕様書に適合すること、もし後日目的物に瑕疵が発見されたときは、原因追及、対策の実施について相互に協力すること、その場合の発注者、受注者(納入者)それぞれの処置方法、そのための費用負担方法、更に目的物の瑕疵により、第三者が損害を被った場合の賠償方法、品質問題が発生したときには、問題解決のために工程の確認など協力することなどが記載されます。

 取引の関係で「品質保証協定書」を取り交わすことが難しい場合があります。しかし、資材購買担当者として自社の要求する品質に関する考え方や受入れ検査等についてどのようにあるべきかを十分考えておきたいものです。日本国内で取り交わされる品質保証協定書に記載される項目と内容を列挙しておきます。資材購買担当者の持つべき基本的知識としてよく理解し、自社の要求レベルと比較研究しておきましょう。納品された原材料に問題を発見した際、強い交渉の材料になります。

 品質保証協定書に必要な項目と内容
① 目的
 納入する原材料は、注文者の要求する品質に適合することを保証すること
② 品質
 要求品質は、図面、仕様書、見本などで相互に確認され、決められること
 安全規格等を遵守して製造すること
③ 品質保証
 製造する工程は充分な品質保証体制を持っていること
 品質を確保するために工程管理や整備を行なうこと
 品質保証体制として充分な検査体制を維持できること
 原材料は要求する品質を保証できるものを使用すること
 製造設備機器、金型、冶工具等の整備と管理を徹底すること
 外注先との取引は管理を徹底すること
 納入の際の荷姿は指定どおりであること  等々
④ 品質確認と記録
 要求品質を確保するために必要な工程検査や完成検査を実施すること
 実施した検査した検査成績書や品質に関する記録を行い、必要に応じて提出できること
⑤ 発注者の受入れ検査について
 納入の際、実施する必要な受入れ検査の方法と品質水準などを明確にすること
 提示した限度見本の管理を徹底すること
⑥ 変更や異常の際の処理方法
 設計変更は、実施したことを確認し、報告できること
 製造条件変更は事前に連絡すること
 品質異常発生の際は連絡すること
 原因調査と再発防止対策は、相互に連絡し、協力すること 等々
⑦ 打ち合わせ議事録
 打ち合わせした内容の議事録は必ず残すこと
⑧ 有効期限
 協定書の有効期限
⑨ 定めにない項目に関する協議について
 協議はお互いに誠意を持って行なうこと

この他に自社として不足と思われる項目を追加します。

掲載日:2015/06/17