11 注文書に必要な記載事項

イグレン 加藤 文男

 多くの企業において、既に原材料を調達するための注文書は形が決まっています。注文書には、本来、発注年月日、購入する目的物の名称、仕様、数量、納期、納入場所、受け入れ検査などの引渡し条件、金額、単価及び支払日、支払い方法が記載されるのが原則です。初めての取引や取引回数が少ない場合、非常に重要な調達では、相互の間違いを防止するために、これらの項目のすべてを注文書に記載することになります。

 しかし、毎回繰り返される取引において、それぞれの注文書に同じことを記載するのは合理的ではありません。そこで個々の注文書には、名称(品名)、数量、単価、金額などその必要項目のみを記載したリストにして、これを注文書としてメールなどで送ることが多くなっています。皆さんの会社の注文書を確認してください。

 取引件数が多く、取引量が多い場合納入場所、支払い条件など毎回決まっている共通的な条件は、記載を省略しますが取り決めがないのではなく、取引を始める前に両者の間に別にこれらの項目について契約を取り交わしている会社もあります。これを「取引基本契約書」といいます。取引基本契約書には、共通条件だけでなく、両者の取引に関する基本的な考え方も記載されています。

 新しく配属された方々や異動になった方々は、まず自社の「取引基本契約書」の存在を確かめましょう。すべての企業でこの取引基本契約を取り交わすことができるとは限りません。しかし、これに近い書類(取引契約書)があるはずです。この書類には、お互いの取引に関する方針や考え方が記載されています。

 お互いの取引に関する考え方や注文書に必要な項目について、多くの企業が使用している一般的な例をあげておきます。この「取引基本契約書」に記載される項目と考え方をぜひ確認しておきましょう。個々の内容は会社により異なりますので自社の注文書と比較し検討しておきたいものです。

 取引基本契約書の主な項目と内容
① 契約の目的
 共通的なことを基本契約とし、個々には注文書として個別契約するので両契約をお互いに遵守す ること
 個別契約として、名称、仕様、数量、納期、納入場所等を注文書に記載すること
 個別契約の変更については相互に協議の上決定すること
② 納入価格の決め方
 原材料ごとに市場動向、数量、納期、管理コスト、利益などを総合的に転倒し、協議の上決定すること
③ 納期
 納期は厳守し、納入が遅滞が予想される場合は連絡する
 注文品が納入されない場合に生じた損害の賠償を請求できること
④ 納入
 指定された荷姿で指定された納入場所に納入すること
発注者は、受領後定められた期間内に定めた受入検査を行なうこと
不合格になった場合の処置の方法と連絡方法
不合格品の特別採用の取り扱い方
⑤ 品質
 納入者は、発注者の指定した仕様に適合する品質に対する責任を持つこと
 後日取り決め期間内に納入品に瑕疵が発見された場合の品質保証に責任を持つこと
 製造方法など必要に応じて工程の確認等便宜を図ること
⑥ 支払い方法
 別に定める支払い方法で代金を支払うこと
⑦ その他
 図面や仕様書等の管理を徹底すること
 工業所有権は、事前に協議し定める
 第三者への製造販売については、事前に協議すること
 相互に相手方の機密に関することを朗詠しないこと
⑧ 契約の有効期限
 この契約書の有効期限
 (契約書には、必ず有効期限を記載します)
⑨ 疑義及び定めにない項目の協議解決について
 記載されていない項目について誠意を持って協議すること

 このほかに取引関係において原材料の支給や金型の貸与等がある場合には、下記のような項目が考えられます。皆さんの会社の実態に合わせて追加してください。
① 注文者(発注者)から原材料、部品の支給のある場合の取り決め
 原材料は、原則は自主調達とすること
必要に応じて原材料を支給すること
 支給原材料は、善良な管理者の注意をもって管理すること
 支給原材料の所有権は事前に定め、それらに対する保険について定めること
② 金型の製造がある場合の取り決め
 金型や冶工具の貸与について事前に定めること
 金型や冶工具は善良な管理者の注意を持って管理すること
 金型や冶工具は定期的な検査をすること
 金型や冶工具の費用負担は事前に定めること
 金型や冶工具への保険は必要に応じて付与すること
 金型や冶工具の返還について予め定めておくこと

掲載日:2015/06/15