5 多発する危機へ柔軟な対応を期待される資材購買

イグレン 加藤 文男

 2011年の東日本大震災では、原材料の供給網が寸断し、一部の部品の供給が長期間ストップし、生産に大きな影響を及ぼしました。それまで大雨や大雪による納期遅れは、ルートを変更して対応し、重大な影響を及ぼさずに問題を解決してきました。東日本大震災を契機にして、地震や津波、台風、更に化学プラントの爆発によって原材料の供給が止まるなどと危機管理に対する考え方が大きく変わりました。

 コストダウンや円高対応のために海外調達した原材料も、地震や洪水など自然災害による納期遅れだけでなく、海外取引先のストライキや暴動など予測のできなかった原因で納期遅れが発生して国内生産に影響を受けることがあります。東南アジアの洪水は毎年発生し、時間が経過すれば水が引き、回復するという一部の地域ではごく当たり前のことであり、日本側の資材購買担当が知らなかっただけのことともいわれます。

 自然災害に対応するために余分の在庫を増やせば、価格対応力が低くなり、グロ-バル化の競争に負けます。大雪による高速道路の閉鎖の対策など従来のレベルとは違って格段に難しい、対応策の検討が必要になります。標準部品への切り替え、サプライチェーンのデュアル化、設計情報に可搬性を持たせ、代替地での生産の可能性など対応策にあらゆる知恵を出さなければならないのです。

 このように資材購買担当者は、国内だけでなく、海外の情報にも注意を払い、各種の災害によるサプライチェーンの弱さを事前評価し、生産システムや制約条件を加味して、影響を予測し、適正在庫を確保することも要求されます。資材購買担当者は、過去の経験を踏まえて幅広い情報の収集方法にも配慮し、高度な知識を有した業務対応つまり、広い意味での資材購買システムの構築能力が必要になるのです。

 新しく資材購買担当に配属された方々は、多発する多様な危機に柔軟に対応できる能力を期待されるように変化しています。これらの変化を幅広い情報収集能力を高め、柔軟に対応する能力を養成し、中小企業の経営に応えていく立場にあるのです。資材購買業務に対する期待が益々高まり、担当者の夢と希望は大きく広がるのです。

掲載日:2015/05/25