イグレン 加藤 文男
昔は家が建つなどといわれたり、後方部隊として軽く見られたり、製造工場では調達が重要といわれたり、評価の大きく分かれる資材購買の立場もありました。しかし、厳しいといっても相手は国内の取引業者であり、文句を言われるのも社内の製造部門などの人たちが相手でした。
ところがこれが大きく変化するときがきたのです。これまで国内取引する業者から、資材購買担当は、ちやほやされながら一部は押柄に国内調達をしていましたが、海外の取引相手とビジネスする時代がきたのです。後方部隊として軽く見られる傾向にあった資材調達どころか、文化や習慣の異なる海外企業と交渉できる能力が要求されるようになったのです。
海外調達では、海外へ出かけ、製造業者を見つけ出し、評価し、取引するかどうかを判断し、決定することが要求されるようになりました。更に海外生産の場合、現地に工場を建設し、現地に赴任し、現地の人たちを採用し、日本の工場と同じレベルの品質の製品を製造してもらうようにまで変化したのです。つまり海外の取引先と交渉できる人材が要求される時代がきたのです。
この変化が起きたのは、1985年のプラザ合意で為替レートが大きく円高になり、原材料を国内で調達していたのではコスト対応が難しくなった1990年代になってからです。このころから海外調達、海外生産に適応できる人材として大手企業では営業部門や技術設計部門など他部門から対応できる人材を資材購買部門にシフトすることを始めました。そして、資材購買部門へ大学卒の新人を配属することも始まりました。
その後、為替の変動も円安に変動はしていますが資材購買部門は、製造業において利益を確保するために情報を収集し、分析し、判断決定する重要な機能を担当する立場になっているのです。本当の意味の「利は元にあり」を実行できる人材が要求されるようになり、現在に至っています。
最近は、円高から円安の方向に変わり、一時海外生産にシフトした製造業も一部には国内回帰の動きも見えています。最近の資材購買担当は、日々の為替変動に配慮しなければ利益を確保できない恐れも出てきています。このように世界の経済情勢を判断しながらビジネスする人材が資材購買部門に要求される時代になったのです。